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ネタバレ注意!!
1年後の『シン・ゴジラ』 何度観ても面白い。

あの日は庵野さんが機嫌悪くて……

松尾 あのとき、確か准監督の尾上克郎さんにだったと思いますけど、「矢口と泉の関係は、庵野さんと樋口さんみたいな関係だから」って言われました。まあ、盟友という感じかなと思って臨んだんですけど。

樋口 松尾さんの撮影初日のこと? 立川の災害対策本部予備施設の入り口で矢口と泉が会うシーン。

松尾 そうです。僕、本読みと顔合わせに行けなかったんで、庵野さんには撮影現場で初めて挨拶したんですけど……。

樋口 あの日はもう、時間がないので庵野さんが機嫌悪くて……(笑)。

松尾 いや、もう「あれ? なんやろう?」ってムードでしたよね。庵野さんとこに挨拶に行ったら「あ、どうも」みたいな感じで、思わず長谷川くんに「ちょっと、どうなん?」って聞いたら、長谷川くんもピリピリしてて、なんか大変なところに来ちゃったな、というのが僕の『シン・ゴジラ』第一印象ですね(笑)。

 

樋口 あの日は、その前の屋上撮影シーンが天気待ちで押してたんですよ。それで、待ち時間に竹野内(豊/首相補佐官・赤坂秀樹役)さんと長谷川さんが影踏みして遊んでたの覚えてる。
 
松尾 段取りやって、カメラテストになった時に、長谷川くんが「セリフは早口で言わないとカットされるからね」って言うんですよ。でも、その前に樋口さんには「早口じゃなくていい」って言われてたんです。で、本番前になって今度はプロデューサーが僕のところに来て「とにかくバーッて喋って、パーッと歩けばいいから」って演出つけてきて(笑)。

樋口 そうそう、プロデューサー自らもね。

松尾 庵野さんいて、樋口さんいて、尾上さんもいて、さらにプロデューサーもおんのかいって、ワケわからないままワーッと歩いてやったのがあのシーンです。

 

泉修一は「おいしい役」だった

樋口 それにしても泉修一は「おいしい役」だったと思う。存在感も、他の登場人物とは明らかに心の掻き乱れ方が違う分、際立っていたと思いますよ。多くの人物が大波に揺られてる小舟なら、泉は揺れていない悠然とした立場。

松尾 確かにそうでしたね。

樋口 長谷川さん演じる矢口は大きく動揺するタイプで、庵野さん的には「追い詰める」という言い方をしてましたけど、けっこう長谷川さん自身をイライラさせるように仕向けて演出してました。

松尾 それでこそ、あのイライラ演技になってたんですね。

樋口 そして、矢口のイライラが爆発するのが、あの名場面。

松尾 「矢口、まずは君が落ち着け」

樋口 まさか、あんなシーンになるとは思わなかったんだよね。