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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/11/22

ボーカルとサウンドの一体感がレベッカの魅力――近田春夫の考えるヒット

『恋に堕ちたら』(REBECCA)/『せかいでいちばん』(井上苑子)

絵=安斎肇

 たしか……。

 数年前に再結成を果たしたとかいう話は耳にしていたのだが、その際には新曲の発表はなされていなかったということなのだろう。

 いずれにせよ、レベッカの17年ぶり書き下ろしを謳い文句にリリースされた『恋に堕ちたら』である。どんな世界になっているのか知りたくなり、早速取り寄せてもらったシングル盤のパッケージの、その物理的ボリュームにまず、俺はちょいと圧倒された。

 歌入り&カラオケで一枚、ミュージックビデオのDVDが一枚、更には今年武道館で行われたライブの模様全19曲を収録した盤が二枚の、都合4ディスクという陣容なのだ。これで一体幾らなのかと見てみると¥3800(税抜き)である。ま、DVD付きは初回限定だそうで通常盤はもう少し安いにしても、シングルで3000円強のお値段とは! あるいはお買い得ということなのか、そこは俺にもよくわからないが、単純に『恋に堕ちたら』だけで他はいらないよ、という人もいるだろうし、せっかくのライブ録音がこれではなんだか“オマケ扱い”な感じでもある。そんなこんなで、とにかく全体を俯瞰したときに感じた第一は、肝心要の新曲の置かれているポジションは案外脆弱なものなのでは? といったことであった。が、そんな先入観は一切捨て、俺はディスク1をスタートさせた。

恋に堕ちたら/REBECCA(ユニバーサル)2000年の「神様と仲なおり/HELLO TEENAGE」以来、17年ぶりのニューシングル。

 エレキギターの乾いた音色で刻むリズムやオルガンの解釈など、どこか70〜80年代初期のアメリカのロックを思わせるコンパクトにまとまったトラックとNOKKOのボーカルとの相性に、文句はつけようもないだろう。なるほど納得させられるものがある。

 彼女には天性のビート感が備わっているといえばよいか。この肉声と――メンバーに入れ替わりがあろうとなかろうともだ――バンドサウンドの、グルーヴある一体感こそ、レベッカの魅力の中枢を成すものなのだったかと、再確認をさせられた格好であった。

 そうした、レベッカのいわば“演奏家としての説得力”は今回のレコーディングにても健在だったのだけれど、ひとつ期待が外れたことのあったのも、正直な感想である。私はこのタイトルを見たとき、ここで歌われる恋とは一体どのような恋なのだろうかと、それをたのしみにしていたのである。冒頭、気になると述べたひとつはそのことだ。

 恋に落ちたら愛の歌は歌えない、歌わない……と情熱的にそういうのだけれど、ではその恋の実態、例えば主人公のひととなりや背景など、具体的な状況といったものが歌詞から伝わってくるのかといえば、残念なことにイマイチ見えて来ない。どう感情移入すればよいのやら。この歌詞――読んでいただければお分かりと思う――聴き手にしてみればいささかつかみづらいところがあるということね。

せかいでいちばん/井上苑子(ユニバーサル)いきものがかりの水野良樹による作詞作曲。10代ラストシングルとPR。

 井上苑子。

 特典映像を観ていたら、演出とはいえ、あまりにも本人の扱われ方が不憫で(笑)。

今週の告知「昨年末に開催されて大好評だったGSフェス。今年もやります。今回もオレがMCを務めさせて頂きますが、実はもう一つアピールポイントがあって、オレの新バンド“活躍中”が、往年のGSバンド達のバックで入ってます。いいサポートしてますんで、ぜひ見といてください」と近田春夫氏。「12月18日、品川区大井町きゅりあんにて!」