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山谷 剛史
2017/11/19

中国の本当の話をしよう――グーグルも使えない「ネット6つの謎」#1

「サイバー万里の長城」の内側をのぞく

出典:『文藝春秋』2017年11月号

1、中国のネットは不便なの?

 中国のネットで悩ましいのが「見たいサイトがなぜか見られない」というネット規制の問題だ。これにより年々確実に不便になっている。

 中国のネット規制は、大まかに2つにわけられる。中国国内で流れるデータの規制と中国国外からの通信規制だ。

 前者に関しては政府転覆やポルノ、暴力を想起させる文言を、中国のサイトやネットサービスで書き込もうとするとすぐに消去されるというもの。政府当局がNGワードを設定し、自動で問題発言を抽出し、最終的に人の手によって確認される。中国国内で利用する掲示板やチャットソフトのほか、ニコニコ動画にあるような弾幕と呼ばれる動画へのコメントも対象となる。ネット言論界の有名人に、当局が直接、発言を慎むよう圧力をかけたこともあった。

グーグル、Twitterには中国からアクセスできない

 一方、中国在住の日本人が頭を抱えるのが、後者の中国国外との通信規制だ。「サイバー万里の長城」ないしは「グレートファイアウォール(GFW)」と呼ばれるネットワークシステムにより、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどにはアクセスできなくなっている。日本で使うのと同様にWEBアドレスを入力しても、「サイトは見つかりませんでした」と返ってくるのだ。グーグル関係のサービスはほぼ利用できないので、Gメールもグーグルマップも使えない。さらにはアンドロイドスマートフォンでアプリをダウンロードする際に利用するグーグルプレイにも、中国ではアクセスできない。

 ただし、この問題はVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用すればある程度解決できる。VPNで接続すれば、中国で本来見ることができないサイトにも、少し前までは問題なく繋がっていた。だが、中国当局がVPN対策を強化したのだろう、今年に入ってからはVPNに繋がらない事態が頻発するようになってきた。VPNは日本の複数の企業も提供しており、これまではそのうちの1つと契約していれば問題なかったが、今では2つ以上のVPNサービスと契約し、その都度繋がる方を選ぶ必要が出てきている(VPNを個人で構築することも難しくないので、それを使って中国でネットを利用する日本人もいる)。

 前述のグーグルやフェイスブック以外にも多くのサイトが繋がらないが、どのサイトを、なぜ遮断したかは当局のみが知るところだ。毎年3月ごろに開催される全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)のような政治イベントの期間は、普段よりもさらにVPNが繋がりにくくなるし、見られないサイトも増える。中国政府外交部の記者会見で、特定のサイトが繋がらない問題について質問が及んでも、「繋がらないということは、違法だということだ」とだけ回答する。

 中国は1990年代後半から、「網境」(国境のネット版)を用意すると発表してきた。さらに近年では、自国のネット環境は自国で管理するという「ネット主権」まで提唱している。特に近年、アフリカ各国などから要人を招集する国際会議「世界インターネット大会」(国家インターネット情報弁公室等が主催)において、中国はネット主権を強く訴えるようになった。中国のネットは「世界に繋がるインターネット」と真逆の方向に加速している。