(#1から続く)
出典:『文藝春秋』2017年11月号
4、ネットサービスも模倣ばかり?
中国のネットサービスもハードウェア同様物真似が多い。例えば中国のネットを普及させたチャットソフト「QQ」は、「ICQ」というイスラエル産のサービスを模したもの。また元々はグーグルを真似た「百度(バイドゥ)」やツイッターを真似た「微博(ウェイボー)」、フェイスブックを真似た「人人網(レンレンワン)」、ニコニコ動画を真似た「ビリビリ動画」などがあり、出るたびに「なぜ中国は模倣しかできないのか」とネットで嘆くコメントが出ている。ただ物はいいようで、ソフトバンクの創業者・孫正義氏などは、同じように、米国で成功したビジネスを、いち早く日本で新規事業として立ち上げることを「タイムマシン経営」と呼んでいるのは周知の通りだ。ヒット製品の模倣は中国に限った話ではない。
ただし中国では、外国産サービスが元ネタの場合、元ネタのほうを政府がアクセス禁止にして利用できなくすることがある。その点で、物真似であっても中国サービスのほうが強い。政府の管理が届かない外国のサービスで、反政府的な書き込みや動画や画像などをアップロードさせないため、というのがその目的である。結果的に、中国の模倣サービスは外国勢のライバル不在のもと、国内の会社同士での競争が発生し、中国人のニーズに合わせて様々な追加機能が付加され、独自の発展を遂げていく。そして中国のネットユーザーに広く愛されるサービスとなっていく。しかも、ソフトウェアはハードウェアと異なり、いくらでも後から追加修正が可能だ。最初はダメな品質でも、物真似に過ぎなくても、後で大きく成長する。
結果、オリジナルの外国産サービスは普及せず、知られることもない。海外に出た中国人留学生が、留学生同士のグーグルやユーチューブをめぐる話題が分からず、何も話せなかったという話はよくある。中国人にとっては外国のサービスが利用できなくても、国内にいる限り不満は持たない。グーグルより百度のほうが検索精度は低く、広告も多くて使いづらいにもかかわらずだ。前述のVPNを使ってまでグーグルを使うのは面倒なのだ。
知り合いと繋がるからこそ楽しいSNSはなおさらで、中国人にとってはツイッターやフェイスブックで繋がる中国人はいないため意味がなく、いくらオリジナルでも必要ないのだ。