昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

横田 増生
2017/11/17

潜入記者だからわかるユニクロ “情報製造小売業”の難しさ

国内事業の経費削減に大号令 ©共同通信社

 ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正社長がこのところ頻繁に使うのが、「情報製造小売業」という言葉だ。顧客の情報を収集し、一人ひとりのニーズに合った商品を提案営業して囲い込む。そのためには、顧客の購入履歴を蓄積する必要がある。

 その手段の1つが、ICタグだ。11月6日付の日経新聞電子版によれば、1年以内に全店舗で商品にICタグをつける方針だという。

 ITを駆使した会員の囲い込みではアマゾン・ドット・コムが先頭を走る。アパレル業界では「ユニクロが、アマゾンに出品すればいい」という識者もいるが、柳井社長は「アマゾンには出店しない」と明言し、ユニクロとして顧客を囲い込む戦略だ。

 過去にも、そのための試みを繰り返してきた。私が『ユニクロ潜入一年』を書くために、ユニクロでアルバイトとして働いていた2015年にはアプリ導入が店頭での最重要ミッションだった。

 レジですべての顧客に「ユニクロのスマートフォンアプリはお持ちですか」と聞いて、ユニクロモバイル会員となるよう勧めることからすべては始まる。

 本部からは、店舗ごとにアプリのバーコードスキャン数のノルマが下りてきた。私自身もレジに立ち、数えきれないほど、このセリフを口にした。だが、実際にアプリをダウンロードしてくれる顧客は、1割前後と低かった。

 実は、ICタグ導入は2年前にも試験的に行っている。

「操作が難しいとお客様に評判が悪く、3カ月もせずに廃止になった」(ユニクロ社員)

 それでも導入に踏み切った背景には、深刻化する人手不足がある。ICタグの先にはセルフレジの導入を見据えているのだ。

 だが、セルフレジを導入すると、アプリの勧誘はどうなるのか。「情報製造小売業」になるための“一丁目一番地”である会員の勧誘ができなくなるのではないか。

 一方、アマゾンジャパンは、ほとんど手つかずだったファッション市場に切り込むため、来年、都内に新しい撮影スタジオを開設する予定だ。ゾゾタウンなどとの陣取り合戦は激しさを増している。

 柳井社長の思い描く「情報製造小売業」への道は果てしなく遠い、と思えてくる。

ユニクロ潜入一年

横田 増生(著)

文藝春秋
2017年10月27日 発売

購入する