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小山 貴
2017/11/20

サウジの王族が一斉逮捕された事情 “拘置所”はリッツ・カールトン

逮捕されたアルワリード王子 ©共同通信社

 サウジアラビアが揺れている。11月4日、サウジアラビア政府は突然、11人の王族を含む約50人を“汚職”で逮捕したことを発表した。その後、拘束者は200人以上に膨れ上がり、収賄や横領などで不正に流用された金額は、過去に遡って、数十兆円に上るとされている。

 逮捕者の中には、著名な投資家で富豪のアルワリード・ビン・タラル王子やアブドラ前国王の息子で後継候補の1人だったミテブ国家警備隊長らが含まれていた。アルワリード王子は米金融大手シティグループのほか、米21世紀フォックスやツイッター社などの大株主でもある。

「今回の逮捕劇は、サルマン国王の息子で国防相などを務めるムハンマド皇太子の主導で行われたとみられます。逮捕の直前に、ムハンマド皇太子を長とする『反腐敗最高委員会』の創設が発表されています」(外信部記者)

 極めて異例の事態だが、政府は未だに逮捕容疑さえ公表していない。

「国民は、長年の腐敗撲滅のドラスティックな改革として歓迎している。もっとも拘束された王族たちの“拘置所”となっているのは、首都リヤドにある高級ホテル、リッツ・カールトンです」(同前)

 米ニューヨーク・タイムズ紙は〈何十年にもわたり腐敗を満喫してきた支配層がそれを批判するのは皮肉だ。国の安全を担う国家警備隊の長であるミテブ王子を追放した理由が“腐敗防止”とは信じがたい〉と指摘する。

 ムハンマド皇太子の本当の狙いは何か。

「ムハンマド皇太子は、王位継承者ですが、ミテブ王子は政治的なライバルとされてきた。今回の逮捕劇で、ムハンマド皇太子は、ミテブ王子の管轄だった国家警備隊も掌握。権力が集中する格好になったのは事実です」(同前)

 一方でムハンマド皇太子は近年、従来の石油依存から脱却し、海外からの投資をよびこむ急進的な経済政策を推し進めてきた。

「逮捕されたアルワリード王子は、ムハンマド皇太子の経済改革を支持してきた人物なのですが、改革の進め方をめぐって何らかの齟齬が生じた可能性もあります」(同前)

 今後、逮捕された人々がどうなるのか、現時点ではまったく見通しが立っていない。