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森岡 英樹
2016/07/29

ポケモンGOで任天堂復活
秘密は“京都経営”

source : 週刊文春 2016年8月4日号

genre : ビジネス, 企業, 商品

君島達己社長は旧三和銀行出身
Photo:Kyodo

 7月22日に日本で配信を開始し、大ブームを起こした「ポケモンGO」。同じ日、株価が急騰したのが任天堂だ。初日は東証一部の売買代金の約3割を占めた。ポケモンGOを開発したアメリカのナイアンティックから、任天堂の関連会社ポケモンがライセンス料と開発運営協力の対価を得るためだ。

 あまりの過熱ぶりに任天堂は「当社の連結業績に与える影響は限定的」とし、「現時点では業績予想の修正は行わない」とコメントを出した。

 任天堂といえば、「Wii」以降はヒット商品に恵まれず、14年3月期まで3期連続で大幅な営業赤字に転落し、売上高は直前の16年3月期まで7期連続で減少していた。

 メガバンク幹部は、今回の復活劇をこう分析する。

「これまでは自社開発のゲーム機に載せていたゲームキャラクターを今回、AR(拡張現実)と融合させ、アプリに落とし込んだ。スマホで稼ぐスタイルへ転換したわけですが、それも強いキャラクター、つまりコンテンツがあればこそ。任天堂には、スーパーマリオやドンキーコングなど多数のゲームキャラクターがある。そうしたコンテンツ力が再評価され、株価が上がっているのでしょう」

 こうした任天堂の開発力を生んだのが堅実な財務体質だ。

「元来、ゲーム業界は商品の当たり外れが大きく、業績が大きくブレやすい。そのブレに耐えうる分厚い現預金を持ち、長期にわたり商品開発や投資を継続できた」(同前)

 任天堂の11年度の現金・預金等の流動性資産は約1兆5000億円。その後の業績低迷や、海外比率が高く外貨建て資産が多いため円高の直撃を受けて、残高は減少したが、16年3月末時点でも約1兆円の流動性資産を持つ。

 一方、銀行からの借入金はゼロ。資産運用も投資有価証券も満期保有目的の公社債を少額持つのみで、本業のゲームの開発・販売に専念する無借金の超堅実経営なのだ。

 任天堂が本社を置く京都には、手元資金が負債額を大きく上回る実質無借金会社が多い。村田製作所、ローム、京セラ、日本電産など錚々たる企業が並ぶ。経営者が時流に流されない独自の哲学を持った会社が多いのが特徴だ。任天堂の復活の鍵は、右顧左眄(うこさべん)しない“京都経営”にあった。