昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

朴承珉
2017/11/26

体内から27センチの巨大寄生虫 「脱北兵士」が伝える北朝鮮の現実

緊迫する板門店。奥が北朝鮮の兵士 ©共同通信社

 13日午後3時過ぎ、板門店の共同警備区域(JSA)に銃声が響き渡った。

 1人の北朝鮮軍兵士が、韓国側への亡命を企て、ジープで走ってきたところ、排水路に落輪。兵士は車を降りて走り始めたが、北朝鮮軍の追跡隊4人が、小銃と拳銃で40発ほどを乱射し、脱北兵士は軍事境界線から南へ50メートルのところで倒れた。

「これを認めた韓国軍の警備隊隊長が、自ら2人の軍曹を引き連れて、匍匐(ほふく)前進で兵士に接近、身柄を確保した。上層部からは“部下を送るべきだった”と詰問されたが、彼の行為に国内では称賛の声が寄せられました」(現地記者)

 板門店から亡命してきた北朝鮮の将兵は、98年と07年に続き、今回が3人目。まだ意識が戻っていないため素性は不明だが、下士官階級とみられている。

 この兵士は国連軍のヘリで大学病院に運ばれ、肺と腹部など2回の手術を受けた。

 執刀した亜洲大学のイ・グクジョン教授は、「銃傷による内臓損傷はもちろん、寄生虫も多いため、予断を許さない状況だ」と説明した。

 驚くべきことに兵士の体内からは、最大27センチの寄生虫が50匹以上も摘出されたという。北朝鮮では、野菜などの肥料として人糞を用いるためと思われる。

「薬も十分でないため、韓国の医師が訪朝した際の調査によると、北朝鮮国民の約95%が寄生虫に蝕まれています。従来、JSAに配置される北朝鮮の兵士はエリート層で、栄養状態も一般の兵士よりもいいとされてきた。ところが今回亡命してきた兵士のお腹の中にはトウモロコシが少しだけ。それだけ北における飢餓が深刻なことをうかがわせます」(前出・現地記者)

 実は“脱北者”は、ほかにもいるという。

「タンチョウヅルです」と別の現地記者が語る。タンチョウヅルは本来、冬になると北朝鮮の安辺地方に飛来する。

「ところがこのところ、80キロ南の韓国の江原道鉄原郡まで下ってくるようになった。北朝鮮では、住民が田んぼなどに落ちている落穂まできれいに拾っていくために、タンチョウヅルのエサが残っていないのです」(同前)

 北朝鮮の現実を世界に知らしめた兵士は、依然、生命維持装置で人工呼吸をしている。