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AIで「未来の年表」はこう変わる――#1 河合雅司×井上智洋

人口減少社会への対処法を明かす

出典:『文藝春秋』2017年11月号

 少子高齢化による危機が叫ばれて久しい現代ニッポン。

 その一方で、近年目覚ましい発達を遂げているAI(人工知能)にも注目が集まっている。AIは「人間から仕事を奪う」と言われる一方、介護などの分野で「人手不足を補ってくれるかもしれない」と期待もされている。

 人口減少とAIの発達は、日本の未来に何をもたらすのか。

『未来の年表』(講談社現代新書)をはじめとして日本の人口動態について著書がある、産経新聞社論説委員で大正大学客員教授の河合雅司氏と、『人工知能と経済の未来』(文春新書)の著者で、AI研究にも精通する駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏が語り合う。

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河合雅司氏(産経新聞社論説委員) ©文藝春秋

河合 私は人口政策、社会保障政策が専門です。残念ながら、日本の人口減少は止まりません。ならば、それを見据えた長期的政策が必要であると考えます。社会保障制度や雇用制度は、このままでは破綻は誰の目にも明らかです。2024年には「3人に1人が65歳以上の“超・高齢者大国”になる」、2026年には「認知症患者が700万人規模に」、2030年には「団塊世代の高齢化で東京郊外にもゴーストタウンが広がる」。私はこうした事態を「静かなる有事」と名付け、警鐘を鳴らしてきました。

井上 私はマクロ経済学が専門です。ただ、大学時代に計算機科学を専攻しており、人工知能に関連するゼミに所属していました。そんな経緯もあって、AIが経済に及ぼす影響も研究しています。

 日本の経済成長率については、2020年代後半に早くもゼロ成長時代に突入するという予測があります。要因は、まさに少子高齢化に他なりません。こうしたなか期待されるAIによる新たな革命は、一般に「第4次産業革命」と言われます。もうこの革命は始まっていると言う人もいますが、私は2030年ごろになると予想しています。AIは今ブームですが、まだ大して普及しておらず、そのころでないと、AIが生産性の向上に与える影響が、マクロ的な統計に表れてこないからです。なお、現在、囲碁や自動運転など特定の分野に特化した「特化型AI」が実用化されていますが、2030年ごろには人間のような知的作業をこなせる「汎用AI」の開発の目処が立つと言われています。「汎用AI」で、経済や社会のあり方が大きく変わる可能性があります。

AIが取って代わる銀行業

河合 まずはその2030年までを見て行きましょう。2030年といえば、人口動態では「勤労世代の高年齢化」が問題になっているころです。「高齢化」というと65歳以上の高齢者が増えることだけが問題ではありません。

 15年後の2030年前後は、40、50代が増え、20、30代がさらに減っていくことになる。明らかに社会全体としては若い労働者が減り、採用もしづらくなる。会社のなかでの役割も変わり、昔であれば、20代とか新入社員がやっていたような仕事を30代、40代がやらなくてはならなくなります。

井上智洋氏(経済学者) ©文藝春秋

井上 私も、そうした人手不足は2030年ごろまでかなり深刻に続く可能性があると思っています。

 よくAIに関して、「人間の仕事を奪う」ということが言われます。技術の進歩によって失業が生まれることを「技術的失業」と言いますが、これはAIでも必ず起きます。ただ、この頃は、その影響が業界、業種によって異なる“まだら模様”になるのではないでしょうか。

 今でも人手不足が深刻なのは、建設業や飲食店、介護の分野です。そのような分野は人が体を動かして作業することが多いので、AIが人の代わりになるには、AIとともにロボットを作らないといけません。研究開発が2段階必要なんです。そうすると、研究開発の進歩というのは遅いということになります。