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AIで「未来の年表」はこう変わる――#2 河合雅司×井上智洋

人口減少社会への対処法を明かす

AIで「未来の年表」はこう変わる #1 から続く)

出典:『文藝春秋』2017年11月号

2042年、日本最大の危機

河合 一方、少子高齢問題における「日本最大のピンチ」は、2042年だと考えています。団塊ジュニア世代がついに高齢者となり、高齢者が約4000万人とピークを迎えるからです。2016年に比べ500万人も多くなります。

 この時代の社会の支え手となるのは、今の中高生です。この世代はそもそもの母数が少ないですし、井上さんがご指摘されているようにAIが職を奪うような社会になっているなら、彼らも自分の生活を守るだけで精一杯になってしまう。

 さらに、団塊ジュニア以降の世代は、バブル経済崩壊の不況期に新卒者だった「就職氷河期世代」でもあり、昭和的な成功モデルに乗っているグループと、一流大学を出たにもかかわらず非正規雇用を余儀なくされたグループに分かれています。

 後者に関しては、いまのところ親の収入、貯蓄、年金を頼りにしているけれども、彼ら自身は無年金、低年金なので、親が亡くなった途端に苦しい状況になります。彼らの老後の生活費をすべて生活保護でまかなうとしたら、国家財政は破綻の危機を迎えることでしょう。

井上 同時期のAIの世界では、2045年に、「シンギュラリティ」が到来すると予想されています。

 シンギュラリティ(技術的特異点)とは色々な意味がありますが、一般にはコンピューターが全人類の知性を超える時点のことです。そうなると人間には予想ができないことが起こることになります。シンギュラリティについては、たとえば理論物理学者のスティーブン・ホーキング氏などは「人類の終わりをもたらす可能性がある」と危惧しています。

人間の仕事は、AI・ロボットによって代替される? ©iStock.com

河合 実際にそのようなことが起きるのでしょうか。

井上 学者によってシンギュラリティに対する見方は様々です。私自身は「AIが人間の知性を超える」という点については懐疑的です。

 知識量、計算速度などでは人間は全く及ばなくなるでしょうが、それらが知性の全てではありません。重要な点について人類が負けなければ、機械は利便性を改善するための装置であるという、両者の基本的な関係は変わることはないでしょう。

 ただ、AIの発達により経済や社会のあり方が抜本的に変革されることは2045年以前にも以降にも起きる可能性はあると考えています。

河合 どのようなことを想定されていますか。

井上 総務省統計局労働力調査の「職業、産業別就業者数」によれば、2015年のクリエイティブ系、マネジメント系、ホスピタリティ系と位置づけることができる「専門的・技術的職業」(研究者や教育者、医者など)、「管理的職業」、「サービス職業」(介護、調理、接客・給仕など)の従事者は、合計2000万人ほどです。

 先ほどこの3つの分野でも、AI・ロボットが進出していき、人間の労働を代替すると申し上げました。レストランを例に取ると、「無人に近い格安レストラン」と「人間が応対する高級レストラン」に二極化され、必要とされる人間も半分程度になることが予想されます。

 そうすると、内実のある仕事をして、それで食べていけるだけの収入を得られる人は1000万人程度になる可能性があるのです。これはだいたい人口の1割に相当します。つまり、極端に言えば、残りの9割は仕事がないわけです。もっとも、今でも子供やご老人がいますので、人口の半分しか働いていませんが。

河合 そうした状況で社会がうまくまわるとは思えません。