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「和食=がん予防策」の落とし穴 がんにならない食生活#1

2017/12/04
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5 アルコールは必ずしもデメリットばかりではない 

 アンチエイジング作用のある栄養素として知られるビタミンEも同様です。 

 低用量のサプリメントを使ったトライアルでは死亡リスクを下げているのに、高用量のサプリメントを使うと、軒並み死亡リスクが上がる結果が出ています。 

 また、アルコールについても同じことが言えます。飲酒は比較的少量でも大腸がんなどのリスクを上げることがわかっている一方、ある程度までの量であれば、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げる効果があり、全体的に考えると、適量においてはデメリットばかりではありません。 

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 しかし、飲みすぎは問題外です。 

 毎日飲酒する場合は、アルコール量換算で一日あたり23グラム程度を目処にしましょう。これは日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の3分の2、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル3分の1程度になります。この量を超して飲む場合は、飲まない日を作って週単位で調整してほしいと思います。もちろん、飲めない人や飲むのが好きではない人は無理に飲む必要はありません。 

©iStock.com

 また、コレステロールという物質は、血管内にできるプラークという血栓の原因物質であり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクを高める働きがあることで有名です。そのため、「コレステロールを下げる食事法」など、いかにしてコレステロール値を下げるかが世間の課題になっている節があります。 

 ならばコレステロールは人間にとって害でしかないのかといえば、そんなことはありません。実はコレステロールは血管の組成になくてはならない存在で、これが欠乏すると血管は弾力性を失い、破れやすくなります。結果として脳出血のリスクを高めてしまうのです。 

 戦後の高度成長期の前あたりまでの日本では、肉をあまり食べなかったことから、コレステロールの摂取量が低い状態が続いていました。そのため脳出血で命を落とす人も多くいました。その後、肉の消費量が高まるにつれて脳出血になる人の数は減少したのです。また、がんの場合、総コレステロール値が低いと、男女の肝がん、男性の胃がんの発生リスクが高かったという研究結果もあるので、低いことが良いわけではありません。 

 何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですが、私たちは、つい「摂り過ぎると危険」、「不足すると危ない」という“片側のリスク”だけに目が向きがちです。しかし、日常私たちが摂取している食品の栄養素や成分は、「摂り過ぎても不足し過ぎても危険」という“両側のリスク”を持っていることが多く、だからこそ「バランスのいい食生活」が重要になって来るのです。 

 赤肉のように、恐がらずにもっと食べてもいい食材がある半面、健康によさそうに見えても塩分過多に陥りやすい和食もある日本人の食生活。これを上手に選び、効果的ながん予防に結び付けていくには、正しい知識を身に付ける必要があります。 

 次稿から、いくつかの具体的な食材や栄養素とがんの関連を解説していきますが、単品の素材だけに頼るのではなく、常に「バランスを考えた適度な摂取」を心がけて下さい。 

 一人ひとりが、正しい知識を持って食生活を見直すことで、食事によるがん予防は実現するのです。

「和食=がん予防策」の落とし穴 がんにならない食生活#1

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