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猪熊 弘子
2016/04/24

「子供は騒音」で開園を断念
待機児童問題にさらなる逆風

source : 週刊文春 2016年4月28日号

genre : ニュース, 社会

開園中止保育園の建設予定地
Photo:Kyodo

 千葉県市川市で4月に開園予定だった私立認可保育園が、周辺住民の反対で開園を断念した。反対理由は「子供の声は騒音」「園の前の道路が狭くて危険」といったもの。理事長は「地域の方に子供たちを見守ってもらえなければ開園は無理。あきらめました」と話していた。「保育園落ちた」ブログ問題以降、さらに注目を集める待機児童問題だが、市川市は全国で9番目に待機児童が多い自治体だ。

 市川に限らず、他の地域でも近隣住民の反対による保育園開園断念や延期が起きている。共同通信の直近の調査では首都圏など9都府県で昨年4月以降、5件の開園が断念、5件が開園延期になったというが、東京23区を含んでいないので、実際にはさらに件数は増える。たとえば世田谷区では高級住宅街の東玉川で防衛庁宿舎跡地に保育園を建設する計画があるが、騒音懸念のほか、「資産価値が下がる」などの理由で反対を受けており、現在も交渉中だ。

 保育園新設は民間のマンション等の建設よりずっとデリケートだ。まずは自治体や法人が用地を取得し、建築確認を取った上で現地に看板を立てるが、看板を見て「聞いていない」と住民が反対運動を始めるケースが多い。前出の理事長が言うように保育園は近隣との関係が極めて重要であり建設強行は難しい。

 立地の問題も大きい。法的には保育園はどの用地でも建てることができ、駅前の雑居ビルの中や電車の高架下、倉庫など、住宅地として使えない場所に作れば反対運動は起こらないが、子供の成育環境を第一に考えれば、静かで広い場所に作った方がいいのは明らかだ。だが、良好な環境の土地であればあるほど反対運動が起こるのが現実なのだ。

 とはいえ、中には反対はあったものの時間をかけて粘り強く説得し、開園にこぎ着けた園もある。そんな都内のある保育園の園長は「子供や職員と顔が見える関係になってからは、反対された方々も今では園にとても協力してくださっています」と話す。

 反対者の多くは中高年だ。一方、働きに出たい若い子育て世代には保育園が必要だ。安倍政権は「1億総活躍社会」を掲げるが、そのために必要な保育園が建設できない。国がトップダウンで取り組まなければ改善は難しい。

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