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山本 一郎
2017/11/30

国家100年の大計を考えるのなら、教育経済学より遺伝行動学

 出生・子育てにせよ、働き方改革にせよ、今回の「人生100年時代構想」では旧民主党を支えた最大の支持団体・連合の意見も聞きながら進めているという点で、真の意味でオールジャパンの動きにしていこうという強い気持ちがあることは分からないでもありません。予算の面でもさることながら、単発の大学入試改革だけでなく、日本がどのようなナショナルアイディアで国富を積み上げ、次の世代によりよい社会を引き渡せるのか、本来は考える必要があります。

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 また、本当に人生100年時代を考え、国家100年の大計を考えるのであれば、すでに旬を過ぎた教育経済学のようなアプローチよりも、遺伝行動学のように本当の意味で人間社会の本質に迫る知見をベースに証拠(エビデンス)を積み重ね、国家と社会と教育のあり方を考えなければただ「国際的な周回遅れの日本が、周回遅れのまま先進国の後塵を拝し続けることを認める会議」になりかねません。そもそも、学力は遺伝で6割が決まっているものであって、勉強に不向きな子供を無理に大学に入れ、大学の入学者数を維持しようとすることで、定員割れして統廃合の対象となるべき大学を温存して文教・科学教育予算を無駄にすることに意味があるのか、というところから議論しなければならないでしょう。

 論文もないのに知名度だけで教授に任命してしまう大学や、海外から有望な研究者を招聘しても俸給も研究体制も満足に与えられず逃げられてしまう現場についても考えるべきでしょうし、そういうところに政府が金を出してどうにかしてやるのは文字通り砂漠に水をやるようなものです。

加計学園問題で大学教育問題が矮小化されたという不幸

 日本人にとって不幸だったのは、そういう大学教育の現状や政策の行き届かないところについてもう少しきちんと話し合うべき時期に、なぜか安倍ちゃんのお友達である加計学園問題が獣医学部の要不要や大学認可の問題へと矮小化され、必要な人材育成を行える大学教育のあり方の問題を捻じ曲げて単なるゴシップ、スキャンダルにしてしまった、という点にあります。

 ご関心のある方は、冒頭に置いた内閣官房へのリンク、読んでみると面白いと思います。著名な各界の有識者が、A4ペラ2ページぐらいのラフな資料にエッセンスだけを詰め込み、これが国家の基本戦略に強く影響を与える(かもしれない)会議で堂々と語られているんですよね。これで会議を成立させている官僚の皆さんは本当にお疲れ様だなと思うわけですけれども。

人生100年構想会議の安倍首相 官邸HPより