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【肺がん編】8大がん第一線の専門医が語る「予防」と「治療」の完全マニュアル

 死亡数で長年トップなのが肺がんだ。2015年の予測値も約7万7000人でダントツの1位となった。罹患数も増加傾向で、部位別で2位の約13万4000人。ステージ別で見ると、早期がんのⅠ期なら5年後の生存率は8割だが、Ⅱ期になると4割に下降し、Ⅲ期だと2割まで下がる。胃腸のがんと比べ、深刻さがまるで違うのだ。

 肺がん治療に詳しい順天堂大学医学部附属順天堂医院副院長の髙橋和久教授(呼吸器内科)が語る。

「タバコが発がんに関係する『小細胞肺がん』と『扁平上皮がん』は、喫煙指数(1日の平均本数×年数)が400以上で要注意、600以上ならさらにリスクは高まります。肺の入口にできるがんなので、レントゲン検査では発見されにくい。血痰などの症状で、だいぶ進行してから見つかるケースが多いように思います」

 タバコが関係しない肺がんも急増している。

「タバコの関与が多くない『肺腺がん』も最近は増えていて、いまでは肺がん全体の50%以上を占めています。細い気管支や末端部分にできるがんで、遺伝子の異常によって起きるとされています。しかし女性に多いことがわかっているくらいで、はっきりした仕組みはまだ解明されていません」

 肺がんの症状は、一般的な風邪とよく似ている。

「せき、痰、息切れ、胸の痛み、発熱のほか、よく見られるのは『声が嗄れる』ことです。風邪でも声が嗄れますが、長引くようなら注意が必要です。がんが大きな血管を圧迫していれば、顔や手のむくみとして症状が表れます。ただし症状が出る時点では、Ⅲ期以上に進行している場合が多いため、健康診断での拾い上げが大切です」

 通常の肺がん検診は、40歳以上でレントゲン検査、50歳以上で喫煙指数が400以上なら喀痰細胞疹(痰の検査)も加わる。本当にこれで十分なのか。

「早期発見には低線量のCT検査が有効です。肺腺がんのなかには“すりガラス状陰影”と呼ばれる濃度の低いタイプがあり、これはレントゲンには写りにくい。2010年に発表されたアメリカの研究では『低線量CTは肺がんの死亡リスクを下げる』という結論が出ました。

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 国内でもすでに一部の自治体で低線量CTを検診に取り入れているところがありますが、今後はさらに普及するはずです。喫煙指数600以上なら年に1回のCT検査が望ましいでしょう。喫煙経験のない方は被曝の関係もあるため、私見ですが3年に1回程度で十分だと思われます」

 大きな期待が持たれているのは薬物療法だ。長期延命の可能性も高くなっている。

「早期のステージⅠで見つかれば手術、Ⅱ期は手術プラス術後の抗がん剤、転移がなくて手術ができない場合なら放射線治療と抗がん剤という組み合わせになります。

 進行した肺腺がんなら、抗がん剤よりも分子標的薬で効果が出やすい。検査をして遺伝子異常が確認できる方には分子標的薬、ない方には従来の抗がん剤です。延命効果は、以前だとⅣ期になると約半数の方の生存期間は14~15カ月でしたが、分子標的薬が出たことで、効果がある方は3~4年も生存できるようになりました。扁平上皮がんだと分子標的薬は使えないので抗がん剤で治療を進めます」