昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

西村 恭昌
2017/12/04

高性能の装置があり、医学物理士がいる施設を見極めよう 放射線治療の「頼れる病院」

著しい進歩を遂げている放射線治療ですが、人材不足という切実な問題も抱えています。日本放射線腫瘍学会前理事長でもある西村恭昌教授が、病院選びのポイントを解説します。

◆ ◆ ◆

 21世紀に入ってから、がん放射線治療は著しく進歩しました。一つは、高性能の放射線照射装置が開発されたこと。二つ目は、コンピューター技術の進歩で精度の高い照射プログラムが組めるようになったことです。この二つによって、放射線治療のレベルは格段に向上しました。その代表的なものが「強度変調放射線治療(IMRT)」と呼ばれるものです。

 放射線にはがん細胞を殺す力があります。しかし、強力な放射線が正常組織にあたると、そこにも障害を与えてしまう。皮膚ならやけどのような症状、腸管なら下痢や出血が問題となります。かつては今より照射精度が低かったので、がんを根治できる線量をかけようとすると、正常組織にもたくさん当たって障害が出た。障害を起こさないよう控え目にかけると、がん細胞を根治できる線量を当てられないというジレンマを抱えていました。

 これを克服するために登場したのがIMRTです。腫瘍の形状に合わせて立体的に放射線が当たるよう、様々な方向から強弱をつけた放射線をモザイク状に当てます。こうすれば、放射線が重なって当たる部分はがん細胞を殺すのに十分な線量となりますが、モザイク一つひとつの線量は弱いので、正常組織にあまりダメージを与えません。これが可能になったのも、高性能の放射線治療装置が登場したおかげです。

©iStock.com

 たとえば前立腺がんは、従来の装置だと70グレイという線量をかけるのが限界でした。しかし、IMRTによって現在は78グレイまで可能になりました。この差は大きく、IMRTの登場以降、前立腺がんの治療成績はかなり向上した。IMRT以外にも現在、呼吸などの影響で動いてしまうターゲットを追尾して照射する「画像誘導放射線治療(IGRT)」など新技術が続々開発され、臨床研究中です。