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LAの若者たち2000人が泰葉の「フライディ・チャイナタウン」をクラブで熱唱…TikTokで“旋風”を巻き起こしているワケ

2022/01/16

「昭和の音楽でLAの2000人が合唱する不思議な世界線に僕らは生きています。」

 2.6万いいねを記録したツイートに映っていたのは、韓国出身アーティストNight TempoのDJにあわせて、ロサンゼルスの人々が泰葉の1981年作「フライディ・チャイナタウン」を熱唱する光景だった。

泰葉 ©時事通信社

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TikTokに届いた「フライディ・チャイナタウン」旋風

 シティポップを中心とする70~80年代邦楽のグローバル人気は、ますます過熱しているようだ。音楽配信サービスSpotifyによると、1984年作「プラスティック・ラヴ」がシティポップ・アンセムとなった竹内まりやのリスナー層は18~22歳が最多だという。

 同じくアンセム的立ち位置である松原みきの70年代ヒット「真夜中のドア~Stay With Me」は、2020年、同サービスのグローバルバイラルチャートにて18日連続首位を記録。世界中にユーザーを抱えるSpotifyにおいて、半数以上のリスナーが22歳以下だという松原は、今や“若者に人気”のアーティストだ(いずれも2021年7月時点、Kompassより)。

 そして、新たな旋風を巻き起こしている80年代ヒットこそ“FLY-DAY(跳ぶ日)”と冠された「フライディ・チャイナタウン」である。夜の中華街をさまよう主人公が外国人とすれ違いながら「私も異国人ね」と悟る同曲は、リリースから40年の時を経て、海の向こうへと飛翔し“異国”の音楽として海外の若者たちを熱狂させることとなったのだ。

「フライディ・チャイナタウン」人気は、若者文化の震源地TikTokにも届いている。ただし、TikTok上でよく使われているサウンドは、フィリピン在住アーティストEVADE FROM 宇宙の「フライト 日 '89 (FRIDAY)」、オーストラリア在住Aestsによる「fight!」といったリミックス版だ。

 

 これらは、フューチャーファンクと呼ばれるインターネット発の新興ジャンルサウンドとされる。フューチャーファンクの定義は難しいが、一般的に、シティポップ等のレトロ調音源を引用し、明るくダンサブルに変換するスタイルの楽曲が多い。

 同分野のスターである前出Night Tempoによると、シティポップを「新しい音楽」だと捉えたロサンゼルスの人々がシティポップをサンプリングしたフューチャーファンクに熱狂したことで、国際人気に火がついたという。