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連載高野秀行のヘンな食べもの

高野 秀行
2017/12/05

 十二時前、ようやく小さい方が焼けた。調理(屠畜)を始めてからざっと三時間半。クイをキッチンへ持っていくとナイフでなく、ハサミで切り分ける。頭と足の先を切ってから、胴体を三分割にする。

クイ焼き上がり

 私は先に足の方を味見。肉は若干赤っぽいが、味は鶏に似ている。新鮮なためか育て方がいいためか、臭みは全くなく、ハーブがいい感じに利いている。コレステロールが少ない肉として知られているだけあって、脂肪分はとても少なく、かわりに皮下のゼラチン質がうまい。

 さらに一時間ほどして本格ランチ。肉を食べて驚いた。さっきは鶏だと思ったのに、今度はちがう。やや独特の匂いとコクのある赤身肉は、昔タイに住んでいたときよく食べていたアヒルそっくりだ。なぜ、高所に住む南米のネズミと熱帯アジアのアヒルが似た味なのか。

 付け合わせはロコト(ピーマンの肉詰め)、ふかしたジャガイモ、パスタに卵をからめたアンデス名物の麺「クルシパタ」。全てこの農場でとれた有機無農薬野菜で、地元の家庭料理だという。なんだか雑誌などで見るニューヨークのアッパーな人たちのランチみたいだ。お洒落でヘルシーで意識高い系で。たしかに標高は三千メートル近くもあるからアッパーはアッパーだが……。不思議と美味さが溶け合った希有なランチタイムだった。

完全オーガニックでオシャレな、アッパー・ネズミ・ランチ