昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「そんなにスケールの大きな話じゃないよ」と

―― 青野さんはブログでも何度も「再反論」を書かれています。なぜ家族のあり方について、ここまで多くの反論が寄せられるのでしょうか?

 青野 自分たちの領分が将来的に侵食されるかもしれないという不安があるんでしょうね。「そんなことしたら、『家制度』が崩壊して日本は滅びる」と言われると、そんなにスケールの大きな話じゃないよ、と思ってしまいますが。所詮は「呼び名」のことですから。

 人間って「見えないもの」に不安を感じるところがあるので、ある意味では健全なリアクションなのかもしれません。ただ、基本的には「本人が選択するべきである」という原則をベースにしないと個別のニーズに応えていけない。かつての伝統を重視するのであれば、「結婚相手は親が決める」「長男だったら家を継ぐ」のかという話になってしまいます。結婚にしても職業にしても、自分で選択できない世の中は窮屈だったはずです。

 ルールを変えたことによる問題が出てくれば、また新しいやり方を編み出して解決していけばいいんです。

―― 選択的夫婦別姓の運用を見据えて、不安を感じている人、怯えている人に対して、どのようなメッセージを伝えたいですか?

 青野 結婚をしたら姓を一つにするという従来のやり方も選択できますから、これまでの方式がよい人にとっては何も変わらない制度を選ぶことができます。ただ、新しい選択肢も増えるので、いままで不便だった人は夫婦別姓を選べるようになって、お互いハッピーですよね。結局、これまでは誰かが改姓のコストを引き受けてきたわけです。全員が強制されてきたコストも軽減される。免許証から保険証、ハンコも作り直して、離婚したらまたやり直して……。やりたくない人はやらなくて済むだけでも、相当社会的コストは浮くはずです。

 手間だけではなくて、実害が生じるようなケースもあります。例えば、研究者は結婚で名前が変わると過去の論文が紐付かなくなってしまい、結婚前の実績が途切れてしまう。改姓のコストを引き受けることが、とても大きなハンデになっているのです。法的根拠がないため、学校や役所などいまだに旧姓使用が禁止になっている職場もあります。

 

サイボウズでニックネームの使用が公式に認められたところ……

―― 青野さんは、普段は「青野社長」として働いていますね。

 青野 そうです。子どもたちは、父親が外では青野だと知っています。子どもにとって当たり前のことなので、よく「夫婦別姓だと子どもがかわいそうだ」と言われますけど、別にそんなことはありませんよ。むしろ親がモヤモヤしていて不幸だったら、よほど子どもがかわいそうですよね。

―― サイボウズの社内的には、いわゆる旧姓使用はどういうルールで運用されているんですか?

 青野 もちろん旧姓の使用はできますし、最近面白いのが、社内でニックネームの使用が公式に認められたこと。それで「ymmt」と名乗る人が出てきて……。

―― アルファベット4文字で「ymmt」ですか? スターウォーズに出てくるC-3POみたいですね(笑)。

 青野 そうですね。「私はそれでいいです」と言われて、こちらは「エッ」と驚きますよ。ほぼ意味がわからない(笑)。ただ、やっぱり自分の名前は自分が呼ばれたいように選択するのが、本人は一番気持ちいいと思うんです。「ymmt」と言われても「誰だ?」と思いますよね。ところが、社内システムでは名前をクリックすると顔写真が出ますから、「あ、この人か」と認識できる。顔のほうが大事になっていいと思いますよ。