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第7回 本屋が選ぶ時代小説大賞発表!

目利きが太鼓判「いま一番面白い時代小説」に輝いたのは……

オール讀物2017年12月号」より転載

――「本屋が選ぶ時代小説大賞」は今年で7回目となります。読者のもっとも近くで本に関わっている書店員のみなさんに集まっていただき、今年も「いま一番面白い時代小説」を選びます。

 今回も、文芸評論家の縄田一男(なわた かずお)さん、末國善己(すえくに よしみ)さんに、今年度(昨年10月から今年9月まで)の刊行作品から10作品を選んでいただき、その中から編集部で次の5作を候補作として決定し、みなさんに読んでいただきました。

『会津執権の栄誉』佐藤巖太郎(さとう がんたろう)文藝春秋

『駒姫(こまひめ) 三条河原異聞』武内涼(たけうち りょう)新潮社

『白村江(はくそんこう)』荒山徹(あらやま とおる)PHP研究所

『山よ奔(はし)れ』矢野隆(やの たかし)光文社

『おもちゃ絵芳藤(よしふじ)』谷津矢車(やつ やぐるま)文藝春秋

 これらの作品について、これから討議していきます。書店員の皆さんには、あらかじめ1位から5位まで決めていただき、その得点を参考にしながら議論を進めていきたいと思います。

左より、三省堂書店神保町本店 母袋幸代、リブロ本部 昼間匠、東京旭屋書店本部 中野誠、さわや書店フェザン店 田口幹人、八重洲ブックセンター 内田俊明(敬称略)

 なお、今回の選考から、リブロの昼間匠(ひるま たくみ)さんに加わっていただきます。どんなお気持ちで臨まれましたか?

昼間 前からこの賞に憧れていたので思い切って手を挙げたのですが、想像以上に大変な仕事でした(笑)。時代小説が好きで仕事を離れても趣味で読んでいますが、限られた期間で賞のために作品を読むというのは緊張しますね。ハードカバーの小説はなかなか売れない時代ですから、この場で少しでも読者の背中を押して、1冊でも多く売る力になればと思っています。

――第一回から参加いただいている中野さん、今回の候補作はいかがでしたか?

中野 どの作品も、さすがというものばかりですね。回数を重ねてくると、ほかの書店員の方の好きな小説の傾向もわかってきますから、皆さんの順位を予測しながら読みました(笑)。

内田 昨年は、候補作がどれも面白くて選ぶのに困った記憶があるのですが、今年はこのところ人気の、絵師を描いた作品から飛鳥時代を舞台にした大作まで、とにかく作品の方向性がバラバラ。そこが面白かったですね。その分、作品の違いがはっきりしていて前回より選びやすかったです。今回もどんな議論が生まれるか、楽しみにしています。

田口 私も前回に比べて選びやすかったですね。前回は初めてでドキドキしながらの参加でしたが、好きな時代小説について皆さんと一緒に語れることが新鮮でとても面白かった。こういう読み方もあるんだな、などと気付かされることも多々ありました。

母袋 私は候補作のリストを眺めて、第一印象では私好みの作品がなくて、推す作品を選ぶのが大変かなと思ったんです(笑)。でも、読み始めたらどれも面白くて、二度読みしたらもっと面白くなって、今度は順位をつけるのが逆に難しくなってしまいました。

『おもちゃ絵芳藤』谷津矢車

『おもちゃ絵芳藤』谷津矢車 著(文藝春秋)

――ご指摘のように今回はバラエティに富んだ作品が並び、票が分かれて接戦でした。まず、谷津矢車の『おもちゃ絵芳藤』からまいりましょう。幕末から明治にかけて、浮世絵師・歌川国芳(うたがわ くによし)の弟子たちの姿を描いた作品です。

内田 谷津さんは、これまでも何度かこの賞の候補に挙がっていますよね。今回は、谷津さんならではの軽みがとても活きた作品だと思います。ただ、どうしても昨年候補になった梶よう子さんの『ヨイ豊』と比べてしまう。こちらも幕末が舞台で、浮世絵師・三代豊国が亡くなり、誰が歌川を率いるのかをめぐる弟子たちの話でした。