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2018年の安倍首相が挑む2つの課題とは

トランプ訪日と天皇への内奏を終え、安倍は様々な次なるプランを描く

2017/12/10

「シンゾー、シンゾー!」「ドナルド」

 11月5日、埼玉県川越市の霞ヶ関カンツリー倶楽部。互いをファーストネームで呼び合い、時に拳と拳を突き合わせるフィストバンプも見せながらの9ホール、約2時間のラウンドは、日米の強固な同盟関係を印象付けた。

 霞ヶ関CCはフェアウェイの両サイドに古木がひしめく難易度の高い林間コース。首相・安倍晋三はダフリ、バンカー、フックやOBを繰り返したが、スコアはまったく意に介さず、米大統領・トランプとの会話に集中していた。ラウンド前、ハンバーガーを食べながらのビジネスランチを含め、安倍は計4度もトランプと食事をともにした。背景には、あえてトランプを国賓扱いにしない日本政府の戦略があった。

 一般に外国要人を国賓扱いにすれば、宮中行事など皇室関連の催しに多くの時間が割かれる。今回のトランプのアジア歴訪では、例えば韓国政府は米大統領を25年ぶりに「国賓」として迎えたが、実務的な話はほとんどできなかった。韓国と違い、日本は実益を重視したため、安倍との個人的な会合が目立つ展開となった。議題のメインはもちろん「北朝鮮」だった。

©文藝春秋

 北朝鮮問題のカギを握る中国は、トランプを異例の厚遇でもてなした。1949年の中華人民共和国建国以来、紫禁城(故宮)での晩餐に招かれた外国首脳はトランプが初めてだ。米中首脳会談後、国家主席・習近平の見過ごせない発言があった。

「太平洋は、米中二大国を受け入れるだけの広さを持っている」

 約10年前、米国のキーティング太平洋軍司令官が、中国人民解放軍の将校と中国で会談した際、「我々は空母を開発している。ハワイを基点に東を米国が、西側を中国が管理しないか」との提案を受けたことがあった。太平洋を米国と中国の二大国で分け合おうという、いわゆる米中二分割支配論だ。無論、今回の習の発言もこの延長線上にある。トランプがこの言葉に反対しなかったことが、日本外務省に衝撃を与えた。

 それどころかトランプは中国から帰国後、自身のツイッターで、中国の北朝鮮への特使派遣について「大きな動きだ。何が起きるか見てみよう」と呟き、中国の働きかけに期待感を示した。結局、訪朝した党中央対外連絡部長の宋濤は朝鮮労働党委員長・金正恩に面会することは叶わず、特使派遣は不調に終わったが、日本外務省の米中接近への警戒感は今も続く。同省幹部はこんな見方を打ち明ける。

「米国はもはや統一朝鮮には関心がない。核を持たない、中国の属国としての北朝鮮新王朝の樹立に狙いを定めているのではないか」

 そのキーマンが、2017年2月にマレーシアで殺害された金正恩の異母兄・金正男の長男であるキム・ハンソルだ。ハンソルは、ネット上に公開された動画で「自分の父は殺された」などと発言し、北朝鮮の現体制に批判的な意見を繰り返している。10月末には、韓国メディアの驚くべき報道もあった。ハンソルを暗殺するために中国・北京に派遣されていた北朝鮮の複数の特殊工作員が、中国の国家安全部に逮捕されたというものだ。韓国の国家情報院はこの報道を否定、ハンソルが実際に中国に滞在しているかは依然不明で、欧州に逃亡しているなど情報は錯綜しているものの、北朝鮮がハンソルを狙う理由は十分すぎるほどある。

 北朝鮮において最も重視される「白頭血統」において、国家主席・金日成の初孫である金正男が本来は序列1位だった。その長男であるハンソルには金王朝の正統な後継者となる資格があるからだ。

 韓国との間に緩衝地帯を保持し続けたい中国と、米国本土に届く核ミサイル開発を阻止したい米国。両者の間で取引が成立し、米国が中国の属国としての北朝鮮新体制を認める時、そのトップに擁立されるのはハンソルだという見方が取り沙汰される中、北朝鮮情勢は予断を許さない状況が続く。