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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/12/13

“のん”のライブ映像を見て「スゲー」と思ったふたつの理由――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎肇

『へーんなのっ』(のん)/『フラッグを立てろ』(YUKI)

 のんといえば、元は能年玲奈を名乗っていたこと、NHKのドラマで人気に火がついたこと、ちょっと独特なキャラクターらしきこと等々、まぁネットのニュースかなんかで読んだのかな? そのぐらいなら俺だって知ってるが、ただ、一度も動いてるとこ見たことないの。声も聞いたことない。てな訳で私、本日初めての“のん体験”となる。

 実は、今週は最初YUKIの新曲をメインに聴くつもりでいた。『フラッグを立てろ』とはどのようなこと/歌詞内容なのか、タイトルに少し興味をひかれていたからだ。それが、届けられたCDを眺めるうち気が変わった。なんかフラッグ立てるとかよりさぁ、『スーパーヒーローになりたい』の方がストレート。パワフルだわ、てか勝ちじゃね? とそう思ってしまったのだ。どうやら高野寛のペンによるものらしい。おっ、高野教授書いてんだぁ。そりゃあ聴かねばね! と申しますのも、何を隠そういま俺は高野寛とは職場の同僚なのだ(笑)。

へーんなのっ(「スーパーヒーローになりたい」収録)/のん(KAIWA(RE)CORD)創作あーちすと・のんの初シングルCD。

 ところが、資料を読み進むうち、更にそれよりM2が気になりはじめてきた。本人が初めて書いた詞曲だという上に、タイトルがまた変なのよ。

『へーんなのっ』……だよ。

 高野教授には申し訳ないが、これには流石の『スーパーヒーローになりたい』も顔色なしといったところでは?

 前振りが長くなりました。

 さてweb上に『へーんなのっ』のライブ映像があったので、とりあえず観始めた俺は「この女スゲー……。」

 思わずそう独りごちてしまった。理由はふたつだ。

 まずは“ボーカルをとりながらのロックギター演奏家”として素晴らしい、もといスゲー。いわゆる“人馬一体”のそのプレイスタイルの、なんとも様になっている半面、歌唱と楽器演奏がきちんと独立をして、身体的によく整理された作業となっていることが、映像から見て取れるのである。読者諸兄には、その音色、リズム共に大変男性的な魅力に満ち溢れたものである点にも是非注目していただきたい。これは本腰を入れてロック演奏をやってきたなというオーラが、画面から伝わってくると思うのである。

 もうひとつは、コード進行である。良し悪しはともかく、どうも我が国ではロックと称する音楽においても、その和声の動きには聴き手の気分を、ウェットにさせる傾向のものが多い。この曲のコードには珍しくそうした“感傷に人を導く”ようなところがない。誤解されることを百も承知で申すならば、のんのコード感覚は極めて“外人ぽい”のだ。

 果たしてそれが天性なのか、確信のもと論理的な構築によるものかは、一曲では判断もつかぬが、いずれにせよこの人の表現センスの只者ではないのは、歌詞/タイトルの表し方にも、十二分に散見は可能だ。あ、既に自分のレーベル持ってるのもスゲーわ!

フラッグを立てろ/YUKI(SONY)アニメ『3月のライオン』主題歌。「いじめ」問題に対して、少女時代の自分の経験を反映させたとか。

 YUKI。

 この発声を聴くと、可愛らしさを残しつつ、上手く歳を重ねて来ているなと思う。 

今週のプラン会議「週刊誌の年末特集で、ぜひ検討して欲しい企画があるんだけど、“有名人お奨めの冷凍食品”っての。もちろん、市販品で。週刊文春の“取り寄せ便”みたいにグラビアで見せて欲しいよね」と近田春夫氏。「ちなみにオレのお奨めは、ケンミンの焼きビーフンと、リンガーハットの冷凍皿うどん。まさにお店と同じ味でびっくりだよ!」