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連載THIS WEEK

名越 健郎
2016/11/10

米アクション俳優にロシア国籍を付与
プーチンの思惑

source : 週刊文春 2016年11月17日号

genre : ニュース, 国際, 芸能, 政治

現在64歳で阪神ファンでもある
Photo:Kyodo

 ロシアのプーチン大統領は3日、米国のアクションスター、スティーブン・セガール氏にロシア国籍を付与する大統領令に署名した。セガール氏の求めに応じたものだが、ロシア側は米国の政権交代をにらんで、対米関係改善に利用する思惑がありそうだ。

 セガール氏は米、セルビアの国籍も取得しており、これで三重国籍となる。この数年ロシア訪問を繰り返し、プーチン大統領と何度も会談、食事も共にしている。

 2人はともに1952年生まれ。プーチン大統領は柔道名誉八段、セガール氏は合気道七段と、マッチョが売りの2人とあって意気投合した。

 セガール氏の父はユダヤ系ロシア人で、一家はウラジオストクから米国に移住。ロシア各地に親族がいるという。

「プーチン大統領は最も偉大な世界のリーダー」「ロシアを米国の同盟国にするのが私の夢」と公言するセガール氏をロシアが利用しない手はない。プーチン大統領は13年のG8の際の会談で、「セガール氏をクレムリンとホワイトハウスのパイプ役にしたい」と提案。オバマ大統領を唖然とさせたこともある。

 米露関係はウクライナ、シリア問題で冷戦後最悪となったが、共和党のトランプ候補は米露関係改善を訴え、対露制裁の解除を示唆しており、ロシアは「トランプ大統領」を切望していた。セガール氏もまたトランプ候補を支持し、ツイッターでクリントン候補を酷評した。

 ロシアの報道によれば、ロシア政府はセガール氏を駐ロサンゼルス名誉領事に起用する可能性があるという。プーチン大統領は女優のシャロン・ストーン氏らとも会っており、ハリウッドを拠点に米国懐柔を狙っているようだ。

 一方でセガール氏といえば、17歳で来日、大阪で英語を教えながら合気道を学び、10年以上日本に滞在、日本を第二の故郷とみなす親日派としても知られる。最近では「日本に近く、自然がすばらしい」という理由でサハリンがお気に入りらしく、この地で映画撮影をすることも検討しているという。北方領土問題の進展が囁かれる中、“ロシア人”セガールは、むしろクレムリンと安倍政権のパイプ役としてふさわしいのかもしれない。