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“バブル”は別の顔をしてやってくる――エコノミストが解説する今必要な知識とは

2018/05/07
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バブルの3条件とは 

 バブルが過熱するときの環境はいつも同じだ。(1)過剰流動性、(2)リスクテイカー、(3)過度の楽観、この3条件がピタッと揃った時、バブルの奔流が湧き上がる。

 個別にみていくと、過剰流動性は日銀の超金融緩和の所産だ。黒田東彦総裁就任以降、日銀は危険なほど副作用を無視した緩和を行っている。消費者物価2%の上昇率を目標にして、長期国債を買い尽くすような量的緩和である。16年9月までは資金供給量を量的に拡大させる政策だった。16年10月以降は、イールドカーブ・コントロールといって、短期金利はマイナス金利、長期金利は0.1%(ゼロ%程度)を事実上の上限にする市場管理体制に移行した。この体制下では、超低金利だけでなく、金利変動を小さくする操作が行われる。金利収入や変動時の利益で商売することが金融機関にできなくなり、巨大マネーを国債市場から追い出す焦土作戦のような政策である。銀行は、貸出増加の圧力にさらされ、不動産や個人の住宅向けに積極貸出をする。

日銀・黒田東彦総裁 ©文藝春秋

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 個人は相続税対策として、アパート・貸家の経営に傾斜していく。都市には無数の空家・空室があるのに、次々に新規供給が行われている。筆者は20~30年後に不良債権が山積したとき、誰が責任をとるのかと不安でならない。また、インカムゲインがなくなることも恐るべきことだ。金やビットコインには利息がつかないから、預金・国債がゼロ金利になると無差別な資金流入が起きやすい。だから、利息がつかない資産、例えば更地を寝かせておくコスト(機会費用)をあまり考えなくてもよくなり、そうした資産取引でサヤ抜きが起こりやすくなる。