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「トランプは誰の機嫌を取りたいのか?」 国際社会からも総スカンの「エルサレム首都認定」発言

──今週の珍言・名言・問題発言

2017/12/09

genre : ニュース, 政治

ドナルド・トランプ 米大統領
「私は、エルサレムをイスラエルの首都として正式に認定する時が来たと確信した」

AFP BB News 12月7日

 1週間の名言、珍言、問題発言を振り返る。歴史的決定が行われた。ドナルド・トランプ米大統領は6日、エルサレムをイスラエルの首都に認定する方針を発表した。米国が数十年にわたって保持してきた方針を転換する決定で、中東の情勢悪化を招く恐れがある。

パレスチナ人の抗議デモで燃やされるトランプ米大統領やイスラエルのネタニヤフ首相の写真 ©ロイター=共同

 エルサレムはユダヤ、イスラム、キリスト教の信者にとって聖地とされる都市で、数十年にわたって対立の火種となってきた。トランプ氏の決定は、イスラム圏から欧州まで国際社会の反対を押し切って行われたものだ。パレスチナとの和平進展に向けた新たなアプローチだと主張するが、その道筋や具体策は一切示されていない。

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 また、トランプ氏は在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する手続きを開始する意向も表明した。これは福音派キリスト教徒や右派ユダヤ系の有権者、献金者らが切望していたもので、トランプ氏が大統領選の公約として掲げていた。

 トランプ氏との電話会談で米大使館のエルサレム移転表明を伝えられたパレスチナ自治政府のアッバス議長は、「(イスラエルとの)和平プロセス、そして地域や世界の治安や安定に重大な結果をもたらす」と警告した(時事ドットコムニュース 12月6日)。

パレスチナ各地で続出する抗議デモ ©AFP=時事

 長年、エルサレムを中立の場所としてきた国際社会からの批判も強い。英国のメイ首相は「地域平和の助けにならない」との声明を発表(毎日新聞 12月7日)、フランスのマクロン大統領は「残念な決定だ。フランスは認めない」と批判した(産経ニュース 12月7日)。8日には英国、フランス、イタリアら8カ国の要請により国連安全保障理事会の緊急会合が開催され、米国によるエルサレム首都認定についての協議が行われる(AFPBB News 12月7日)。

 トルコのエルドアン大統領は「越えてはならない一線だ」と強い口調で警告(ロイター 12月6日)。「トランプ大統領が誰の機嫌を取りたいのか理解するのは不可能だ」「このような行動を起すことは、世界を、特にこの地域を火の輪の中に放り込むことである」などと批判した(TRT トルコ・ラジオ・テレビ協会 12月7日)。

 政権内でも、国際協調や中東情勢の安定を重んじるティラーソン国務長官、マティス国防長官は反対の立場を示した(日本経済新聞 12月7日)。一方、トランプ氏に高額献金を行ってきたユダヤ系米国人のカジノ王、シェルドン・アデルソン氏らが決断を後押ししたと言われている。米紙ワシントン・ポストは「和平プロセスではなく、公約に突き動かされた決断だった」と報じた(時事ドットコムニュース 12月7日)。