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ユニクロ潜入・横田増生×東京新聞・望月衣塑子 ジャーナリストの“嫌われる勇気”

対談 ジャーナリストの“嫌われる勇気” #1

ジャーナリストは嫌われてこそ? 取材拒否がきっかけになった潜入ルポ『ユニクロ潜入一年』の横田増生さんと、安倍内閣の菅官房長官への「質問攻め」で注目を集める東京新聞記者・望月衣塑子さんが初対談。全2回の前編ではユニクロ、官邸取材の裏側と秘話を語っていただきました。(11月25日のイベントを収録。司会は大山くまおさん)

新宿ライブフライヤーにて

横田さん、根性が本当にすごいですね

横田 このたび『ユニクロ潜入一年』を刊行いたしました横田と申します。3店舗で働いたんですが、去年の今頃はビックロの「感謝祭」で一生懸命、服を畳んでおりました(笑)。

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望月 東京新聞の望月衣塑子と申します。今回は横田さんに対談相手として指名していただいたそうで……。ご本を読ませていただきまして、横田さん、根性が本当にすごいですね。私も結構しつこいと言われますが(笑)。今日は対談を通じてたくさん学んでいきたいと思います!

――では、横田さんがこの本をお書きになられた経緯を教えてください。

横田 あっ、その前に上着を脱がせていただいて(赤のパーカーを脱ぐと、中からユニクロの黄色いポロシャツが現れる)。錦織圭モデルです(笑)。

 

望月 ハハハ。仕込んでたんですね。

横田 パーカーもユニクロだったんですけどね。それでこの本を書いた経緯なんですけど、この前作にあたる『ユニクロ帝国の光と影』を書いたとき、ユニクロが版元の文藝春秋に2億円超の損害賠償を求める名誉毀損裁判を起こしました。いわゆるスラップ裁判、威嚇裁判ですね。これは最高裁まで行って、文藝春秋の完全勝利に終わります。それが2014年の年末です。裁判が終わって、久しぶりにユニクロの決算会見に出席しようと思っていたのですが、その決算会見の当日に発売になった『週刊文春』で、僕は「ユニクロ請負工場 カンボジアでも“ブラック告発”」という小さな記事を書いていたんです。すると、ユニクロの広報から僕の携帯に電話がかかってきて、今日の決算会見には出ないでほしいと連絡が入った。

ユニクロ柳井社長からの“招待状”だな、と

望月 この本の「はじめに」にありますが、ちょうど会見に向かうJR京葉線の車中のことですね。

横田 そうです。「この記事がこのタイミングで出るのはまずい」と。「何か間違ってましたか?」と聞いたら「間違ってはいない」と言う。ほう、同じ記事を出した朝日も日経も会見に出られるのに、僕は出られない。裁判でも勝った。記事も間違いがない。なんであかんねん、という話になりますよね。「で、どうしたんですか?」とさらに突っ込んだら、「柳井(正・社長)から、お断りしろと伝言を預かってきました」と。彼らとしては、記者会見取材を断りさえすれば、僕がもうどこかに行ってしまうだろうと思っていたんでしょうね。

 

望月 しかし、それは甘い考えだった(笑)。

横田 ええ。僕は毎朝googleでユニクロ関連のニュースをチェックしているんです。で、そういえば1カ月前に『PRESIDENT』の記事で柳井社長が「うちの会社の悪口を言う人に、私は会ったことがない」「そういう人は、うちの会社で働いて、ぜひ一回体験してほしい」というようなことを語っていたことを思い出したんです。これは僕への“招待状”だな、と。

望月 招待状(笑)。

横田 そこで『週刊文春』に「ユニクロで働きたいんですけれど」って打診をしたら、サポートをしていただけることになり、10回にわたる連載の後、このように書籍という形にしていただきました。とても幸運だったと思います。