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ユニクロ潜入・横田増生×東京新聞・望月衣塑子 ジャーナリストの“嫌われる勇気”

対談 ジャーナリストの“嫌われる勇気” #1

note

望月さんは、潜入取材の経験あるんですか?

望月 1冊目で名前が知られているから、潜入のために離婚して名前を変えたんですよね?

横田 はい。妻と離婚して、再婚して、妻の姓になりました。だから僕の「横田増生」というのは、今はペンネームでして、潜入するときは田中増生(仮名)といいう名前です。

望月 初めは慣れなくて「田中さん」と呼ばれても気づかなかったとか(笑)。

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横田 やっぱり練習していないので、わからないんですよ。初日行って、「田中さん、田中さん、チョコレートいりませんか?」って言われて。誰のことだ? あっ俺のことか、みたいな(笑)。望月さんは、潜入取材の経験あるんですか?

 

望月 私の潜入なんて横田さんに比べたら……。千葉の支局にいたときに、廃棄物処理法違反をしている暴力団の傘下団体が管轄している場所へいったことがあるくらいですね。ゴミがどのぐらい蓄積されているかを見るために潜り込んだんですが、見つかって、「ワーッ」と怒鳴られたから、ガーッと逃げました。横田さんの潜入期間は1年。だからこそ現場からの声が生々しいですし、説得力があるんです。

横田 ありがとうございます。

官房長官の記者会見は、企業の決算会見に似ている

――横田さんは、望月さんの官房長官記者会見の質問攻めをどうご覧になりますか?

横田 いや、あれが普通ですよね、記者としては。他の記者に「なぜもっと聞かないの?」と思うことたくさんありますもん。

望月 そう言っていただけると、これからも長官に向かって手を挙げる勇気がわきますね(笑)。

横田 あと、官房長官の記者会見を見ていると、けっこう企業の決算会見などと似ているところがあるんですよ。

望月 決算会見でも、経済部の記者はあまり相手の嫌がることを聞かないんですか?

 

横田 嫌がることを聞かない某大手経済新聞の担当者が優先的に指されるんですよ。僕がユニクロの決算に出席していたころは、僕が一番に行っても、席が取ってあるんです。それで「最近、ユニクロのファッションがちょっと尖がってきましたが」みたいなことを質問する(笑)。「ほかに聞くことあるやろ!」って。僕は今でもヤマトホールディングスの記者会見にも行きますが、そこでも「ヤマトさんは非常に頑張っておられて、サービス残業代も払われまして」みたいな感じでゴマばかりすっている。僕が「質問、質問、質問」と言いながら手を挙げても、ほとんど当たりません。

望月 とはいえ、気持ちいい質問をしがちな新聞社も、硬軟とりまぜて時には厳しい質問もするんですよね?

横田 しないです。

望月 えー。それはないんですね。

 

横田 僕が見聞きしている範囲では、ゴマスリ一辺倒です。ゴリゴリゴリゴリ。同じ新聞社でもしっかり仕事ができる人を何人も知っていますが、その経済新聞社で企業担当になると、ゴマをするほど出世できるのでしょうかね。

望月 うーん、マスコミと企業の関係としては不健全ですよね、それは。