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加計学園問題のキーマン、下村博文を追及せよ

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』の森功が下村博文に逃げられた瞬間

2017/12/19
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 加計学園問題は、首相が友人を特別扱いしているのではないかという追及をかわしつづけ、進展のないまま今に至っている。疑惑を、安倍晋三首相と加計孝太郎氏の関係から徹底取材し、核心に迫る『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』の著者・森功氏が、もう1人の重要人物を明らかにする。

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取材をドタキャンした下村博文

「まさか、部屋にいらっしゃるとは、思いませんでしたよ」

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 衆議院第2議員会館622号室のインターフォンを押すと、部屋の中から秘書らしき女性がドアを開けたので、思わずそう言った。6月26日午後のことだ。

「外から電話しても留守だし、1階の受付から連絡しても誰も出ない。どうして電話にも出なかったのですか」

 彼女が部屋から廊下に出てきたので、そう尋ねると、もじもじしながら、下を向いて黙ったままだ。これでは埒が明かない。つい詰問口調になってしまった。

「あなたは秘書でしょ、電話にも出ないのはつまり、居留守を使っていたわけですか」

 すると、彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべ、ようやく耳元で囁いた。

「私は留守番なので……。電話に出るなと言われていて」

 そのあと人差し指を唇の前に立てて、差し出した私の名刺の裏に、なにやら文字を書き始めた。まるで筆談だ。

〈実はいっさい応答するなと指示されていて〉

東京都議会選挙開票での下村博文。©杉山秀樹 /文藝春秋

 部屋の主が下村博文である。私はこの日の午後3時、議員会館で本人にインタビューをする約束をしていた。ところが正午過ぎになって、とつぜん文藝春秋編集部に取材をキャンセルする旨のファックスが届いた。それ以来、ぱったり連絡がとれなくなった。

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)

 言うまでもなく、取材の最大のテーマは、加計学園による文部科学大臣当時の下村への裏政治献金疑惑だ。入手した下村事務所の内部資料で発見した加計学園側からの献金は、まず大臣就任直前の2012年9月に後援組織「博友会」の政治資金パーティのチケット20万円分を購入。20万円なら政治資金収支報告書に記載義務がないが、大臣就任後にはこれが5倍になっている。13年、14年にはそれぞれ100万円ずつ合計200万円分のパーティ券の購入が記載されていた。

 くだんのインタビューで、それらの事実関係を質そうとしたのだが、取材をドタキャンされてしまったのである。のちに下村本人が記者会見を開いて一方的に献金そのものを否定したのは既報の通りだが、記者会見での下村の釈明は矛盾や疑問が多く、まったく疑惑は晴れていない。おまけに会見以降、当人は関連取材にいっさい応えず、口をつぐんでいる。