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森岡 英樹
2016/03/25

中国、キヤノンの爆買いでも終わらぬ東芝危機

source : 週刊文春 2016年3月31日号

genre : ビジネス, 企業, マネー

田中久雄前社長には捜査の手が
Photo:Kyodo

「忸怩(じくじ)たる思いだが、構造改革のために断行する」

 3月18日、東芝の室町正志社長は、経営再建計画発表の席上、白物家電事業「東芝ライフスタイル」を中国美的集団(広東省)に売却することを聞かれ、こう唇を噛みしめた。

「このままでは債務超過に陥りかねない。銀行管理が目前に迫っていた」

 銀行関係者は、東芝の現状をこう表現する。不正会計で糊塗(こと)していた東芝の財務は「株主資本比率がマイナスに転じるリスクを考えた」(室町社長)ほど危機的な状況にある。

 唯一、黒字が見込めた虎の子の医療機器事業「東芝メディカル」の売却を急いだのも債務超過の危機を回避するためだった。

 そこで“神風”が吹いた。当初、4000億~5000億円とみられていた売却額は、複数の有力企業が入札で競合したおかげで7000億円まで暴騰し、キヤノンが掌中に収めた。

「優先交渉の条件として、買収資金の一部は、この3月期に前払いされることになっている。苦戦続きだった白物家電は、投資先を探していた中国企業が、『東芝ブランドを維持、国内外の製造拠点の閉鎖なし、人員削減なし』という好条件で、“爆買い”してくれた。こうした切り売りの結果、東芝は一息つくことができた」(前出・銀行関係者)

 2年間で3万4000人におよぶ人員削減と合わせ、来期は全事業黒字化のV字回復を狙うと言う。ただ、これで東芝は、エネルギー、社会インフラ、半導体の主要3事業で構成される会社となった。

「原発が中心のエネルギーと半導体の両事業は、中国経済の減速や原油安など外部環境の厳しさが増している。成長余力のあった医療機器事業を売却したことで、東芝の将来性に疑問符がついたことは確か」(証券アナリスト)

 特に米原子力子会社ウェスチングハウス(WH)については、WH単体では13億ドルの減損処理を実施しているものの、東芝本体では未処理のまま。来年度から監査法人が替わり、減損処理リスクが燻る。加えて、WHについては米司法省と米証券取引委員会から会計処理問題に関連して情報提供を要請されており、行政処分の可能性も残る。

 東芝の危機は、いまだ終わっていない。

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