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埼京線・集団痴漢事件でわかった巧妙な手口とは?

埼京線はかねてより痴漢が多いといわれてきた ©共同通信社

「こいつら痴漢だ!」

 7月19日夜、JR埼京線板橋駅に到着した電車内で、耳慣れない叫びが響いた。普通なら、こうした痴漢の通報は「この人、痴漢です」と単数形のところ、複数形。異様な「集団痴漢」が発覚した瞬間だった。

 警視庁板橋署は11月27日、集団で痴漢をしたとして、強制わいせつ容疑で京大出身のIT企業幹部、斉藤祐輔容疑者(35)ら4人を逮捕。今月7日には、電車を停止させて事件解決に寄与した乗降客整理アルバイトの男子学生(20)に感謝状を贈呈した。

 警視庁担当記者の解説。

「板橋署は周辺の乗客の手から繊維片を採取したり防犯カメラ映像を分析したりするなどして証拠固めを進め、逮捕にこぎ着けました。驚いたことに、4人は全く面識なし。ネットの掲示板で情報交換をしながら、被害を訴えなさそうなターゲットや、出口に近く逃げやすい車両に絞り、集団で20代の女性のパンツのなかをまさぐるなどの卑劣な行為に及んでいました。通常、痴漢には都迷惑防止条例が適用されますが、今回は断然刑罰が重い刑法の強制わいせつ罪が適用されました」

《1902が最強》《1902で女の子泣かすなよ、、、》

《痴漢体験告白》などと題したネット掲示板には隠語を使った情報が飛び交っている。

「1902」は19時02分新宿発川越行き埼京線快速電車の意。掲示板には《書き込みの内容は妄想》などとあるが、犯人らの携帯電話に同じ掲示板サイトへの接続履歴が残っていた。こうした情報交換を犯行に繋げたことは明らかだ。

 11月に警視庁に摘発されたHKT48ファンによる集団キセル事件も、素人の犯罪者同士を結びつけたのはネットだった。マイナーな案件にも協力者を募れるネットの特性はクラウドファンディングなどに活用されてきたが、素人犯罪のクラウドソーシングにも悪用され始めている。

 捜査関係者は「昔の泥棒は何年もかけて協力者と関係を築き、被害者を選定した上で犯行に及んだが、いまは一見普通の人間がネットでたやすく組織犯罪を起こす時代になってしまった」と慨嘆する。

《赤信号みんなで渡れば怖くない》とはビートたけしの至言だが、全員で法を犯したその先に、司直の手が待っていることを忘れてはならない。