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男のヤクザ映画、女のタカラヅカ

楠木建の「好き」と「嫌い」 好き:ヤクザ映画 嫌い:タカラヅカ

2017/12/19

Vシネがある!

 実録ヤクザ映画の大作がつくられなくなって久しい。寂しい限りだ――。そうお嘆きの貴兄には、Vシネマを薦めたい。「Vシネ」というとバカにする人もいる。ところがどっこい、これがわりとイイのである。

 それもそのはず、そもそもVシネの正式名称は「東映Vシネマ」、東映の登録商標になっている。東映の仁侠映画から実録路線をリードした当時の社長、岡田茂の精神をいまに引き継ぎ、往年の「プログラムピクチャー」の勢いでやりたいほうだいやっているのがVシネなのだ。かえって東映濃度は増しているといえなくもない。

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 Vシネ初心者であれば、まずは清水健太郎主演の作品をお薦めする。どれをとっても間違いない。いよいよ虚実の境目が判然としない。演技のリアリティにおいて他の追随を許さない。清水健太郎こそ正真正銘の実録俳優であるといっていいだろう。

 最近の作品であれば、『制覇』シリーズあたりはいかがだろうか。三船敏郎、丹波哲郎、菅原文太、梅宮辰夫、若山富三郎というオールスター・キャストで作られた往年の東映の大作のリメイクで、この人たちに負けず劣らずの濃い面々が入れ替わり立ち替わり出てくる。なによりもパート14まであるのがイイ(来年にはパート15が出るらしい)。いつまでたっても終わらない。年末年始をぼんやりと過ごす友としてうってつけである。

 本編がなくなってもVシネがある。これで日本も安心だ。