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一番の障害は「小児性愛者」の存在……『はじめてのおつかい』がドイツではありえない理由

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 日本のテレビ番組『はじめてのおつかい』がNetflixを通じて世界に配信され、海外でも話題を集めています(タイトルは『Old enough!』)。

 筆者がまだドイツに住んでいた1990年代、夏休みに日本を遊びに訪れたときは、この番組を見るのが楽しみでした。未熟だけれど一生懸命な子どもたちの奮闘ぶり、テレビ画面越しに伝わってくる地元民の優しい雰囲気、そしてほのぼのとした独特なナレーションも好きでした。

なぜ『はじめてのおつかい』は日本でしか成立しないのか? 写真はイメージです ©iStock.com

 海外には『はじめてのおつかい』のような番組はありません。私の故郷であるドイツの場合、そもそも幼稚園児ぐらいの小さな子どもを「1人でどこかに行かせる」のは一般的な感覚とは言い難いからです。

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 今回はドイツと日本の文化を比較することで、「なぜ『はじめてのおつかい』がドイツではありえないのか」を考えてみたいと思います。

あまりにも「目まぐるしい」ドイツのスーパー

「子どもを1人でおつかいに行かせるなんて考えられない」

 2人の幼稚園児を育てるドイツ人のお母さんに話を聞いたところ、そんな答えが返ってきました。理由を尋ねると、「スーパーのレジに子どもが対応するのは無理だから」と言い切ります。

 確かにドイツのスーパーはとにかく「スピード」重視。日本のように愛想のいい丁寧な接客は期待できません。レジで客が財布の中から小銭を探そうとモタモタしていると、露骨に嫌そうな顔をする店員もいるぐらいです。

 先月、筆者が久しぶりにドイツへ行き、現地のスーパーで買い物をしたときも、そのせわしなさに焦ってしまいました。まず日本と違って、「会計後に商品を買い物バッグに詰めるためのスペース」がありません。会計をすませたら、客は即座にその場で商品を自分のカバンや袋に詰める必要があります。

 さらに、レジ打ちの人もそれを待ってはくれません。次の客の商品もまた物凄い勢いでレジ打ちされていくため、買ったものを早く詰めないと、後ろに続く客の商品と混ざってしまう危険もあります。