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連載THIS WEEK

野田前首相が異例の質問
予算委ドヤ顔質疑の舞台裏

source : 週刊文春 2016年3月3日号

genre : ニュース, 政治

演説上手で人事下手

「安倍総理、お久しぶりです。覚えてますか」

 2月19日、衆院予算委員会でこう切り出して質問に立ったのは民主党の野田佳彦前首相(58)だ。

 野田氏と安倍晋三首相が直接対決するのは2012年11月の党首討論以来。その場で衆院解散を宣言し、総選挙で民主党は政権を失った。

「覚えてますか」は自虐ネタではなく、伏線だ。党首討論での解散の約束は「衆院の定数削減は2013年の通常国会でやりとげる」が条件だったからだ。そこで野田氏は定数削減が実現できていない、と迫ったが、安倍氏は「私たちは勝って、皆さんは負けた。そのこともかみしめてほしい」と逆襲。野田氏は「いや、ビックリポンですね。嘘をついたことになりませんか?」と追い打ちをかけたが、野田氏の質問の前に、安倍氏はガス抜きを図るべく、自民党議員に定数10削減を明言しており、対決は盛り上がりを欠いたまま終わってしまった。

 首相経験者が予算委員会で質問するのは、新進党の海部俊樹氏が当時の村山富市首相に質問して以来、約20年ぶりのこと。そんな「異常事態」に、温厚で知られる野田氏が挑んだのは、民主党と維新の党の野党再編を巡る状況が大詰めを迎えているからだ。

 再編に積極的な維新、生活の党は、野田政権末期に、消費増税に異を唱えて離党した議員が多く在籍しており、維新の松野頼久代表などはその典型だ。周辺によると、野田氏は「あの時の分裂騒ぎで、松野氏には足を引っ張られた」と不快感を示している。

 民主党内では、連合と並んで、野田氏のグループが、性急な新党結成に慎重な構えだ。「岡田克也代表が、最も信頼しているのが、野田氏です。蓮舫代表代行も野田氏に心酔しており、執行部への影響力は大きい」(民主党議員)

 さらに、野田氏は自民党や霞が関でも「鳩山由紀夫、菅直人両氏に比べて民主党で唯一、まともな首相経験者」(自民党幹部)との一定の評価もあり、発言力は小さくないのだ。

 とはいえ、消費増税法を成立させて解散に突入。当時の首相周辺が「100はとれるだろう」とみていた民主党の議席が2ケタにとどまる大惨敗を喫した戦犯が野田氏であることも間違いない。予算委での質問後、安倍氏の答弁を「ドヤ顔で言うな」と評した野田氏自身も、ドヤ顔で質問するほどでないのも、また事実である。

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