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永田町で取材して分かった「政治部記者はなぜ態度がデカいのか」

『トップリーグ』(相場英雄著)――著者インタビュー

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ラストの主人公の決断には、僕の実感がこもっています

 この作品を書くにあたり、現役の国会議員や秘書など永田町の住人たちに徹底取材を行った。取材を続けるうち、相場さん自身が、永田町の“誘惑”を身を以て感じたという。

相場英雄©三原久明

「政治部の記者って昔から態度がデカかった(笑)。何であんなに偉そうなのか不思議でしたが、今回その理由がわかりました。与党の国会議員ともなると、めちゃくちゃ情報持ってるんですよ。週刊誌の記事とかで『そろそろ解散か』なんて記事が出たあと、国会議員に真偽を聞くと、『あれはガセだよ』とか即答してくれる。すると、この情報を知っている俺は特別な人間だ、みたいな優越感に浸ってしまうわけです。僕ですらその有様ですから、毎日仕事で国会議員たちとつき合う政治部記者が勘違いするのも無理はないなと」

 やがて松岡と酒井は、お互いに取材を進めるうち、現政権を揺るがしかねない秘密にたどり着くのだが……。こう書くと、巨悪を追う記者が腐敗した政治家を追い詰める勧善懲悪の物語を想像するが、そこをひとひねりするのが相場さんの流儀だ。

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「読者は納得してくれないかも知れないけど、ラストの主人公の決断には、僕の実感がこもっています。僕ね、正義感を振りまわす奴が大っ嫌いなんです(笑)。性善説は一切信じてないし、僕自身がいつも悪い ことを考えている(笑)。僕の実家は町工場だったんですよ。今は潰れちゃってますけど、資金繰りが悪化すると、親父が借りた金を代理で返しに行ったりしてね。そのときお金が絡むと人間は本性が現われるということを学びました。勧善懲悪の物語は、他の方が書いてくださるので、僕は金に苦労した人間として、今後も自分なりのリアリティを追求していきたいと思います」

―――

あいば・ひでお
1967年新潟県生まれ。89年時事通信社に入社。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。12年『震える牛』がベストセラーに。『血の轍』で山本周五郎賞及び大藪春彦賞の候補に。16年『ガラパゴス』が、17年『不発弾』が山本周五郎賞の候補になる。

トップリーグ

相場英雄(著)

角川春樹事務所
2017年9月29日 発売

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永田町で取材して分かった「政治部記者はなぜ態度がデカいのか」

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