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連載THIS WEEK

名越 健郎
2016/09/10

プーチン12月訪日
永田町で囁かれる「二島返還解散」

source : 週刊文春 2016年9月15日号

genre : ニュース, 政治, 国際

東方経済フォーラムにて(3日、ウラジオストク)
Photo:Kyodo

 9月2日、ウラジオストクで行なわれた日露首脳会談において、プーチン大統領が12月15日に訪日することが決まった。両国の今後の内政・外交戦略をにらんだ微妙な日程設定である。

 日本は年末までG7(主要7カ国)の議長国である。ウクライナ危機を受けた欧州連合(EU)の対露制裁は来年1月末で期限切れとなるため、プーチン大統領としてはG7議長国との経済協力をアピールすることで、EUの制裁解除を促す狙いがある。

 また米国の新大統領就任式が来年1月20日で、米新政権発足前に“日米離間”を画策できる。日本にとっても、米外交の空白期はフリーハンドの外交が可能となる。

 一方で、大統領訪日はロシアの政治日程にも影響しかねない。プーチン大統領に近いクドリン前財務相らは、9月の下院選に続いて18年3月の次期大統領選の前倒し実施を求めている。

 ロシア経済は原油安や欧米の経済制裁で低迷、国民生活も苦境にあり、大統領選の前倒しは、国民の不満が高まる前にプーチン長期政権を確実にする動きだ。訪日を成功させ、欧米の制裁緩和を実現すれば、前倒し大統領選に有利な環境を創出できる。

 ラブロフ外相は12月の訪日時に北方領土問題で何らかの結論を提示する方針を示唆したが、現状では、1956年日ソ共同宣言に基づく歯舞、色丹の二島引き渡しにとどまる可能性が高い。

 プーチン大統領の過去の発言や国内の保守・愛国志向から見て、大統領が「三島以上」に踏み込むのは困難だろう。平和条約調印を優先する安倍晋三首相は二島引き渡しを基礎に、将来の国後、択捉の帰属協議にも道を残す形で決着させるかもしれない。

 事実上の「二島先行返還」となるが、その場合、自民党政権が戦後主張してきた「四島返還」と矛盾する。

 永田町では、安倍首相が北方領土問題での方針転換を口実に、来年1月にも衆院解散、総選挙に踏み切るとの憶測が出ている。領土問題で国民の信を問う「二島返還解散」との見立てだ。

 これまで14回会談し、盟友関係を築いた安倍、プーチン両首脳は、互いの政権延命に向けても阿吽(あうん)の呼吸があるようだ。

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