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中島 岳志
2018/01/11

中島岳志さんが20歳の自分に読ませたい「わたしのベスト3」

中島岳志/東京工業大学教授 ©文藝春秋

 二十歳の私は、孤独だった。自分が考えていることは、同世代には共有されないという諦念があった。

 当時の私は保守思想に傾斜していた。きっかけは西部邁の『リベラルマインド』や『戦争論』を読んだことだった。小選挙区制導入に反対し、行き過ぎた規制緩和に待ったをかける言論は新鮮で、かつ説得的だった。

 保守思想に関心をもった私は、同時代の保守論客の言論にも目を向けた。しかし、論壇では排外主義や歴史修正主義、市場原理主義が保守の仮面を被って跋扈していた。私は、強い嫌悪感を抱いた。これが現代の保守なのだとすると、自分は保守を名乗りたくないと思った。

 私は鬼籍に入っていた保守思想家のものを読み始めた。中でも熱心に読んだのが福田恆存の著作だった。特に『人間・この劇的なるもの』は繰り返し読んだ。

 福田を読んでいる友人など誰一人いなかった。保守を自任する同級生も、単なる反左翼にすぎなかった。

 そんな私にとって、一九七八年生まれの浜崎洋介が書いた『福田恆存 思想の〈かたち〉』を手にした時は、本当にうれしかった。孤独から解放された気持ちを抱いた。二十歳の私にこの本を手渡し、「お前は一人ではないよ」と肩を叩いてやりたい。同じ著者の『反戦後論』も必読。

 当時、ヒンディー語を専攻していた私は、「与格」という奇妙な構文に出会った。ヒンディー語では I love you を「私にあなたへの愛がやってきて留まっている」という言い方をする。自らの意志や力が及ばない事態や行為は、「〜に」で始まる与格構文を使うのだと習った。

 「私の行為の源泉が、私の意志の外部に存在する」というヒンディー語の発想に、何か深遠な思想を感じたが、当時はそれを言語化することは出来なかった。國分功一郎が出版した『中動態の世界』は、同様の言語構造の問題を哲学的に追究している。同じ時期に、同じ問題に思想的関心を抱いた人がいたことを、私は二十年以上たって知ることになった。

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『福田恆存 思想の〈かたち〉』浜崎洋介/新曜社

福田恆存 思想の〈かたち〉

浜崎 洋介(著)

新曜社
2011年11月22日 発売

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『反戦後論』浜崎洋介/文藝春秋

反戦後論

浜崎 洋介(著)

文藝春秋
2017年5月15日 発売

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『中動態の世界』國分功一郎/医学書院