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ヤクルト元ドラ1左腕・竹下真吾に見る“制球難”のゆくえ

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2017/12/23

「制球難」に苦しむ選手たち

 台湾のアジアウィンターリーグを、今年最後の野球と思って楽しんできた。しかし見ているうちに、どうにも心配な選手が出てきてしまった。ロッテ1年目の島孝明投手だ。とにかく四球と暴投ばかり。本当に投げ方を忘れたような投球を続けていて、ネット上にも「イップス」という言葉が散見されていた。シーズン中はどうだったかと見てみると、イースタン登板3試合1.2回、打者14人に被安打2、四死球7、暴投5。防御率は43.20。制球難は今に始まったわけではない。昨年U-18でアジア優勝も経験した投手なのに、だ。

「イップス」という呼び名は「うめき声」の感嘆詞から生まれたという。投げるのが仕事のプロ野球選手なら、呻くほどに苦しいことなのは間違いない。過去にも多くの選手が「イップスだった」と告白し、メディアにも取り上げられている。

 今秋戦力外となった元ロッテの田中英祐は、フォーム改造で変えてはいけないところまで変えてしまい、投げ方が分からなくなってしまったという。浦和球場に通うロッテファンに聞いたところでは、島もフォームを直そうとしておかしくなったらしい。今年は阪神・藤浪の制球難が話題になった。イップスかとも言われたが、投げ方を失うほどではなかったようだ。「イップス」と名の付かない制球難も枚挙に暇がない。

 今年のヤクルトにもいた。制球難といえば、竹下真吾の代名詞。2014年ドラフトで、安樂智大の外れ1位としてヤマハから入団した竹下は、最速150km/hの重い速球を武器に即戦力と期待された左腕。プロ入り初年度は怪我で出遅れ一軍登板なし。2年目の昨季はキャンプから一軍帯同したが、オープン戦終盤は大崩れ。結局二軍でも成績が振るわなかった。与四球の多いのはずっとだが、投球練習や送球、牽制でも暴投を重ね、制球難は明らかだった。フォームの改善にも取り組んでいたが、結果に結びつかない。

10月に戦力外通告を受けた14年ドラ1の竹下真吾 ©HISATO

 伊藤智仁元投手コーチは、竹下を振り返り「とにかくコントロールが悪かった。投げ方も悪いし球も悪い」と一刀両断した。一軍投手コーチならそうだろう。即戦力のはずの投手だ。一軍で戦力にならなければ意味がない。しかし二軍コーチ陣は切り捨てる訳にもいかない。ドラ1を何とか使えるようにしようと努力した。年齢的にも投げ方を一から変えることは難しいが、彼も必死だったのは間違いない。結果が出なくとも、練習に打ち込み、フォームを見直し、またマウンドに上がった。

 ここ数年、「竹下らしいピッチング」といえば、「四球、三振、四球、安打、暴投で失点」などという点の取られ方への皮肉だった。打ち崩されることはあまりないが、とにかく四死球と暴投が多い。それでも球威はあって三振は取る。それだけに微かな期待は持ってしまう。そんな投手だった。目の前のブルペンではすごい球を投げていたから、尚更そう思う。ドン! と響くストレートは、間近で見ると震えた。連れも「隣の投手が貧弱に見える」程の球だと言っていた。