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がんの「怪しい民間療法」を見抜く三つの方法

週刊文春「徹底検証 著名人がすがった『がん民間療法』」取材の裏側(後篇)

2017/12/28
note

<怪しい>その(3)
「やればやるほどよくなる」と言ってくる

 がん専門医や緩和ケア医に取材すると、患者さんの中には効果を信じて、特定の民間療法に通い詰めたり、食事療法や健康食品を一心に続けたりする人がいると聞きます。そのような人の中には、もしかすると「施術を受ければ受けるほど」「健康食品を飲めば飲むほど」よくなると言われた人がいるかもしれません。

 しかし、そのような療法家や業者ほど、気をつけたほうがいいと思います。なぜなら、民間療法や健康食品に、「やればやるほどよくなる」という科学的な証拠はどこにもないからです。薬だってそうです。適量というものがあり、度を超すと副作用が出てしまいます。民間療法や健康食品も、やればやるほど副作用が出る可能性は否定できません。

 それに、やればやるほどお金が嵩みます。1回の施術が1万円だったとしても、1週間に5回通えば5万円、4週間(約1ヵ月)通えば20万円になります。療法家や業者にとっては、「患者さんがのめり込んでくれるほどお金になる」という現実があるのです。

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値段が高いほうがよいものだと錯覚してしまう心理

 それに、人間には高ければ高いほどよいものであるかのように錯覚してしまう心理があります。たとえば、素人にはワインの本当の価値はわかりませんが、値段が高いほど高級でおいしいと思い込んでしまいませんか?

 それと同じで、民間療法や健康食品も値段が高ければ高いほど、効果があるかのように思いがちです。しかし、実際にどれだけのコストがかかっているのかわかりません。もしかすると、原価は非常に安いかもしれないのです。

 そもそも、効果はわからないのですから、患者さんから高いお金をとるのは倫理的とは言えません。それなりの料金を取りたいのであれば、まずは無料あるいは格安で患者さんに試してもらい、科学的にデータを収集・分析したうえで論文あるいは学会で報告し、専門家の評価を受けるべきでしょう。

 民間療法家や健康食品の業者の方々からすると「科学、科学とうるさい」と思ったかもしれません。私も患者さんが心身の癒しを感じているのならば、「科学」にこだわり過ぎる必要はないと思っています。

 ただ、だからこそ経済的・心理的・身体的な重荷を負わせることなく、病に苦しむ人たちが心地よく利用できるようにしてほしいのです。ましてや、藁にも縋る思いをしている患者さんやご家族から、お金を毟り取るようなことはしてほしくありません。

 患者さんやご家族の方々も、民間療法家や健康食品の宣伝文句を鵜呑みにして、大金をつぎ込むようなことだけはしないでください。信頼できる主治医と相談しながら、後悔のない判断をされるよう願っています。

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