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インド・中国・パキスタンが繰り広げる「南アジア三国志」

激しいつばぜりあいは日本にとっても無縁でない

2018/01/07

 南アジアで熾烈なパワーゲームが起きている。主要プレーヤーは、インド、中国、パキスタンだ。本稿ではこれら三国の関係を「三国志」に見立て、2018年に各国で何が起こり、いかなる相互作用が展開されていくかを示していくことにしたい。

 筆者はこの三国について、「インド=魏」「パキスタン=蜀」「中国=呉」と捉えている。魏は中国ではないのかという向きもあろうが、南アジアで他を圧倒するプレゼンスを持つという点ではインドがふさわしいと考える。

 パキスタンを蜀としたのは、「ムスリムのホームランド」を建設せんとインドと袂を分かって独立に踏み切ったことが、劉備が魏から離れて益州(現在の四川)の地に王朝を築こうとした経緯と重なるからだ。

 印パの相克をにらみながら着々と影響力を拡大しようとする中国は、魏蜀対立のなかで漁夫の利を得んとする呉ということになる。

2期目に向けた足場固めに注力するモディ首相――インド

 インドでは、ナレンドラ・モディ首相率いる「インド人民党」(BJP)政権が5月で発足から丸4年を迎える。早期解散の可能性はゼロではないが、安定政権なら5年の任期を全うすることが多いことから、次期総選挙は下院が任期を満了する2019年5月頃になりそうだ。したがって、2018年は2期目を狙うモディ首相がより盤石な態勢を築くための、いわば実績づくりのための1年となる。

Twitterには3800万人のフォロワーがいるモディ首相 ©getty

 2014年5月の就任以来、モディ首相は高額紙幣廃止や全国統一間接税の導入など、大胆な改革を断行してきた。「三国志」のアナロジーなら、こうした果断ぶりは「インドの曹操」と言えるかもしれない。改革による刺激の強さゆえか、成長率は一時5.7%(2017年4~6月)にまで落ち込んだが、堅調な個人消費にも支えられ、その後は6%台を回復。経済政策を評価して、ムーディーズは2017年11月にインド国債の格付けをワンランク引き上げている。

 巨大な連邦国家であるインドは州の権限が強いため、各地の州政権の動向が重要だ。2017年は人口2億2400万人のウッタル・プラデーシュ州や首相のお膝元グジャラート州などの議会選挙でBJPが勝利を収めた。一方、野党の足並みはそろっていない。特に、独立以来インド政治をリードしてきたインド国民会議派は、前回総選挙で大敗を喫してからというもの、党勢回復の目処が立っていない。

 2018年もIT拠点のベンガルールを擁するカルナータカ州や人口8100万人のマディヤ・プラデーシュ州など、重要州での議会選挙が予定されている。好調な経済をバックにこれらの州をBJPが制していくことができれば、次期総選挙での勝利を経て第2次モディ政権の発足がさらに現実味を増していくことになろう。