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フジテレビに「新しい地図」はあるか? テレビっ子会議2017【バラエティ編】

てれびのスキマ×スーパー・ササダンゴ・マシン×エスムラルダ×岡室美奈子

note

『陸海空』ナスDもすごいけど、バイきんぐ小峠、西村がすごい

エスム ところでいま、他局だと長寿バラエティってありますか? 『ガキの使い』ぐらい?

ササダン ドキュメント系のバラエティですが『探偵! ナイトスクープ』は長いですけどね。2018年で放送30年!

スキマ ドキュメンタリーバラエティといえば、今年は本当にいい番組が多かったです。『陸海空』『池の水ぜんぶ抜く』、それから『ハイパーハードボイルドグルメリポート』。特に『陸海空』のナスDのブレイクはすごかった。

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コラムニスト、てれびのスキマさん

ササダン ロケ担当のディレクターだと思ったら、製作総指揮してるエラい人なんですよね。

スキマ 『イッテQ!』だと、たとえばイモトアヤコが自ら進んで過酷なロケに行くという演出をしてるわけですけど、『陸海空』はそのさらに先に行ってスタッフ自らが巨大カタツムリを食べて、アマゾンの部族が使う染料を塗りたくって顔がナス色になっちゃう。

ササダン U字工事さんも一緒にロケに行ってたのに、完全にナスDに食われてましたもんね。ただ、スタジオMCをしてるバイきんぐの小峠(英二)さんはさすがだと思って見ています。VTR見ながらのツッコミ方とか、普段の裏回し的なポジションじゃない時の小峠さんはすごい。

スキマ ナスDの活躍で終わらず、にわかに注目を浴びつつあったバイきんぐの西村瑞樹さんを起用するフットワークの軽さも素晴らしいと思います。ドキュメンタリー系の番組では、あえてナレーションを外すというタイプのものも目立っていました。たとえば『ハードボイルドグルメリポート』もそうだし、NHKの『ノーナレ』も。わかりやすくするためのサービスが過剰な番組が多い中、わかりやすさよりも「生で伝える」ことを重視している感じがしました。それはおそらく、“テレビ的なもの”へのアレルギーが広がっている今の、テレビ的なウソに対する一つの答えかたなのかなっていう気がします。

 

『水曜日』のクロちゃんは人形化されている

ササダン Eテレの『ねほりんぱほりん』もそのタイプですかね。さっき、エスムラルダさんが『有吉ジャポン』のお話をされていましたよね、聞きにくい話をスタッフが気を遣いながら上手に質問していくという。『ねほりんぱほりん』もまさに、サークルクラッシャーとか、不倫中の人とか、訳ありの一般人に根掘り葉掘り実体験を聞く番組ですが「生で伝える」ことをテーマにしてます。

スキマ それも豚の人形を通して。NHKが長年培ってきた人形劇の技術を使いながら、全くNHK的じゃない番組をやっているのが面白いですよね。

ササダン 岡室さんと同じ早稲田で人形学を研究してる菊地浩平さんが、人形を一番うまく使っている番組は『ねほりんぱほりん』だって言ってました。あの番組はMCのYOUさん、山里(亮太)さんがモグラで、それに顔出しできない一般人それぞれが豚の人形ですよね。だから、見てる方はかなりキツい内容でもソフトに受け止めて見られるんですって。「豚の言ってることだ」って。

 

エスム なるほど、人形化するってことですね。装置の発明って大事。

ササダン だから『水曜日のダウンタウン』のクロちゃんが「モンスタークロちゃん」ってある種の人形化されてるのは、ああいう非人道的なドッキリを仕掛けられているのを、視聴者がソフトに受け止められるようにする仕組みなんですよ(笑)。

岡室 『水曜日のダウンタウン』ほど毀誉褒貶の激しい番組もめずらしいですよね。物議を醸す内容でBPO(放送倫理・番組向上機構)で問題にされるかと思えば、今年は「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」でギャラクシー賞月間賞を受賞して高く評価されました。

『ねほりんぱほりん』はついに書籍化もされた