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原田 マハ
2018/01/13

原田マハさんが20歳の自分に読ませたい「わたしのベスト3」

原田マハ/作家 ©森 栄喜

 子供の頃からアートと文学と歴史が大好きだった私。けれど、どれも本格的に自分のものにできずにいた。美大に行くでもなく、美術史を学びもせず。物語めいたものも書いてはいたが、終わらせることができずにいた。何をやっても中途半端。けれど将来、自分は「フツーのOL」以外の何かになりたい。クリエイティブな仕事に就きたいと願うものの、どうすればいいんだろう?

 実家の懐事情が苦しい時だったので、学業そっちのけでがむしゃらにバイトをしていた。本を買うにもお金がなくて図書館に通い、片っぱしから美術書を広げて眺めたものだ。そこに何かヒントがある気がして。

 クリエイターになりたくて、でもどうしたらいいかわからなかった二十歳の私に、まずはこの一冊『テオ―もうひとりのゴッホ』を読んでもらいたい。画家フィンセント・ファン・ゴッホは生前に一点しか絵が売れず、その死後百年経って作品価格が数百万倍に跳ね上がった。孤独な彼の人生を支え続けたのは弟テオ。彼もまた、兄の後を追うようにしてこの世を去った。その後、兄弟が遺した作品の数々を引き継ぎ、広めた人がいたからこそ、ゴッホは世界中で知られるようになったのだ。芸術家は一日にしてならず、そしてひとりでは芸術家になれず……ということを、本書を通して知ってほしい。

 次に勧めたいのが『クアトロ・ラガッツィ』。十六世紀末にローマへ渡った天正少年使節団の発生と経過、結末を追いかけた歴史書であるが、小説のように面白い。まだ十代の少年キリシタンたちが、八年もの月日をかけてローマと日本を往復した。根性すえて生きていってほしい、とのメッセージを本書に込めたい。

 最後に、美術史をしっかり勉強してもらいたいからこれ。『近代絵画史―増補版』。この本にどれほどモダン・アートの真髄を教えてもらったことだろう。アートと文学と歴史、ぶれずに突き進んでほしい。そうしたらきっといいクリエイターになるはず。がんばれ、二十歳の私。

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『テオ─もうひとりのゴッホ』マリー=アンジェリーク・オザンヌほか/平凡社

テオ―もうひとりのゴッホ

マリー=アンジェリーク オザンヌ(著),伊勢 英子(翻訳)

平凡社
2007年8月1日 発売

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『クアトロ・ラガッツィ』若桑みどり/集英社文庫

 『近代絵画史─増補版』上下 高階秀爾/中公新書