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箱根駅伝のあまりに細かすぎる楽しみ方――ディープな箱根駅伝座談会 #1<br />

箱根駅伝のあまりに細かすぎる楽しみ方――ディープな箱根駅伝座談会 #1

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地図には「寺田交差点」も入ってます

ポール 今回の地図のポイントは、現地に行ったときに分かることなんです。例えば、普通の地図だと有名な会社とかが描いてありますよね。でもコースに立ってその社名の看板が見えなかったら「それ、どこだ?」って話じゃないですか。その点この地図は、駅伝当日の人が多いなかでも、キロ3分で走っている選手が目視できるものを描いています。名前が大きく表示してあるマンションとか、正月にシャッターが降りてても絶対に分かるお店とか……そこに立ったときに目印となるものを描いてあります。

 1km毎のポイントがずれると、選手にとっては死活問題です。100mずれたら、タイムが10秒以上かわってきます。ですから、マッピングした後はGoogleストリートビューで徹底的にチェックしました。

マニア なるほど、立ったときの視線なんだ! この店なんだろう?と思ってたけど……。

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西本 実際に箱根を走る選手や各ポイントに伝令のために陸上部員やOBを配置する主務(マネージャーのこと)も重宝すると思います。僕らとしては寺田夏生(国学院→現・JR東日本)のようにコースを間違う選手を二度と出してはならない(2011年の第87回大会、ゴール120m手前でコースを間違え、危うくシード権を逃しそうになるハプニングが発生)。だから10区にもちゃんと寺田交差点(寺田がコースを間違えた交差点を箱根駅伝好きはこう呼ぶ)も入れてあります!

卒業後の取材で「寺田交差点」に立つ寺田夏生選手(「Number Do」より) ©文藝春秋

ポール そういうのを分かってもらいたくて、この本を作るときにデザイナーさんや編集の方を連れて、箱根路を往復したんですが、我々の話が細かすぎて、後に確認したら、ほとんどが聞き流されていたという(笑)。

8区を走る選手に読んでほしい“おせっかいコラム”

西本 ポールさんは記録マニアなんですが、それが現れているのが8区。8区はどんなガイド本でも「つなぎ区間」と言われて記事が薄めなんですが、実は区間記録が20年間更新されていない。そこに目をつけたポールさんが今までのデータを参考に、頼まれてもないのに書いたうざいコラムが「8区区間記録更新への必要条件とは」(笑)。

ポール そうそう、おせっかいコラムです。実力と準備と運のすべてが重ならないといけない的な(笑)。これはぜひ2年連続8区区間賞をとった青山学院の下田裕太(4年)にめっちゃ読んでほしい。というか手に書いておいてほしい! セブンイレブン前は何分通過とか。

西本 15kmの給水ポイントで監督車から「お~い、ここは嘘の遊行寺の坂だからな~」とか言われながら(笑)。ちなみに「嘘の遊行寺」は高林祐介さん(駒澤大学→トヨタ自動車)が解説をしてるときに言った言葉で、ファンの間では話題になったんです。「本当の遊行寺の坂はこの先にある」という意味。今回、本人からも「取り上げてくれてありがとうございます」というコメントが来ました(笑)。

マニア 「嘘の~」って陸上部あるあるなんですよ。僕も高校時代に陸上部で、丹沢湖のコースで「ここは嘘のカーブだからな~」とかコーチに言われたことありましたもん。全日本大学駅伝にも「嘘の直線」があるし、“嘘の○○”って陸上部用語だと思います。