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箱根駅伝のあまりに細かすぎる楽しみ方――ディープな箱根駅伝座談会 #1<br />

箱根駅伝のあまりに細かすぎる楽しみ方――ディープな箱根駅伝座談会 #1

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山梨学院・上田監督の“長編エッセイのような言葉”

ポール もうひとつの僕のこだわりは、OBや取材関係の方も重宝する「大手町報告会会場マップ」です! 

語りが「長編エッセイ」のような山梨学院・上田誠仁監督 ©文藝春秋

西本 「報告会」というのは、ゴールした後、各大学が大手町の各所に散らばって締めの挨拶をする会です。なかでも山梨学院の報告会は生中継するに値しますよね。とくに去年はすごかった。上田誠仁監督の、もうなんでしょうね、長編エッセイのような言葉が流れるんです。

ポール 東洋や日体大も、業務連絡じゃないのがいい。

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西本 駒澤の大八木弘明監督の言葉もいいですね。大八木さんといえば、監督車から勝負どころで「男だろ!」とか「白バイを抜け!」と選手に熱い檄を飛ばすことでも有名ですが、この報告会では大八木さんは「子供たちは」って感じで語るんですよ。選手や学生じゃなく、「子供たち」。教育者としての姿が見えるんです。

「子供たちは」と語りかける駒澤・大八木弘明監督 ©文藝春秋

ポール このマップ、きちんとコンビニが入っているのもポイントです。この意図分かりますか? 大手町ってオフィス街なんですよ。そうすると三が日はコンビニも開いてないんですが、唯一開いているのがここに描いている3軒。どうですか、カメラマンさん!(と、箱根駅伝の撮影もする弊社カメラマンに呼びかける)

弊社カメラマン (ペラペラめくりながら)これいいですよ。毎年ゴール後、迷子になるので、これがあれば計画的に回れます。文藝春秋写真部でも共有します。

西本 本当は交通封鎖とか、そこまでやりたかったんですけどね。

ポール ああああーーーーーー!!!! そう! 地下鉄封鎖されてるんですよ! 気づかなかった! これは来年アップグレードしたい!

“箱根駅伝の伊能忠敬”になってみないか

西本 色々出てきますよね。実はこの本を読んだフォロワーや選手、関係者から、続々と文字校正や地図校正が届いてきてて。みんなでこの本を完成させようとしてくれているんです。なので、この記事をお読みになった我こそはという読者の方、オレも地図校正に参加したいという猛者を募ります。

マニア ははは、猛者を。

西本 箱根駅伝における現代の伊能忠敬になってみないか、というプロジェクトです(笑)。

――ちなみにマニアさんは何の担当ですか?

西本 全体を温かく見守ってくれました。

マニア 一緒に打ち合わせにいき、一緒に箱根を歩き、一緒に写真をとりましたが、本そのものは、ほぼ何もやっていないという(笑)。

西本 いやいや、マニアさんがいるかどうかは大きいんですよ。文藝春秋における菊池寛(創業者で社の1Fに銅像がある)みたいな存在で、文春の方も菊池寛の銅像があるだけでピッとするでしょ? それと同じです。

ポール 唯一の競技者目線を持っていますからね。

西本 そうそう。こういうことをされると選手は怒るとか、困るとか、落ち込むとか、わかってる。こういう本って派手に騒いで、炎上記事みたいなのを織り込んだりしがちなんですけど、ふざけているように見えながらも、選手へのリスペクトは大事にしようと。こういう書き方をしたら、マニアさんは悲しむな、ということは徹底的に削って書いていきました。

――地図に載っている写真もかなり細かいんですが、これはどうしたんですか?

西本 それは2年にわたって、この3人で往路・復路完遂をしてるので、そのとき撮ったストックが膨大にあるんです。もちろん選手が走っている写真も。

マニア いっぱいあるんですけど、肖像権を配慮して、選手の姿はすべてニュースさんが再現しています。

――それは記念写真を撮りに行ってるということですか?

西本 いや、路面チェックです(笑)。

ポール 名目は清掃です(笑)。コースに余計な石が落ちてないかなど、大会前に3人で車に乗って清掃しにいくんです。

西本 箱根駅伝は試走が禁止されていますから、万が一にも誤解されることがないように交通ルールは守ってますからね。

構成/モオ 撮影/榎本麻美

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