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大谷翔平はこれからアメリカ人の野球観を変えようとしている

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

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さわやかだった大谷のお別れ会見

 クリスマスの25日は季節が一歩進んだ印象だった。強い冬型の気圧配置の影響で北日本と北陸は暴風雪や高波に要警戒である。道央も夜には吹雪く可能性があった。それでも札幌ドームには早くから待機列が延びていた。大谷翔平のお別れ会見である。2017年の最後にファイターズは大切な行事を組んだ。

 ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム。大谷は大リーグへ旅立つことになった。エンゼル・スタジアム前で行われた入団会見(12月9日、アナハイム)を見て、赤がこんなに似合うのかと驚いたのだ。昔はカリフォルニア・エンゼルスやアナハイム・エンゼルスという呼称だったと思うが、「ロサンゼルス・エンゼルス」だと、もう天使が2回(「Los Angeles Angels」)も出てくる。

 僕もさっそくエンゼルスの野球帽をかぶって東京都港区芝5丁目、JR田町駅前、森永プラザビルの「エンゼル街」に急行したものだ。ここに「大乃」という、横浜大洋、巨人、ヤクルトで活躍した大野雄次さんが経営されてる小料理屋がある。誰もいないと思ってみても、どこかでどこかでエンゼルが見つめてる。そんな気分でアメリカ西海岸の華やかな入団会見の映像を田町の店で見た。何か誇らしいのと寂しいのが両方あったなぁ。大谷君は遠くへ行っちゃった。

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JR田町駅前にある森永エンゼル街 ©えのきどいちろう

 で、その後、公開のお別れ会見を札幌ドームでやるらしいと知った。あぁ、そうか、と納得する。そうだ、5年前のクリスマスだ。米球界挑戦を希望していた大谷君は、日ハム球団のドラフト指名&育成プランのプレゼンに進路を変更し、ファイターズ入りを決断した。その公開入団会見がクリスマスの札幌ドームで行われたのだった。球団は物語のプロローグとエピローグを同じ形で揃えた。そして、僕のように「大谷君は遠くへ行っちゃった」と寂しく感じているファンにお別れの機会を与えてくれた。

 18時、栗山英樹監督とともに登場した大谷君はグレーのスーツに紫のタイだった。後に記者質問で意図を明かしたけれど、ファンは皆、直感で理解した。ファイターズの青とエンゼルスの赤を混ぜ合わせたのだ。挨拶はいきなり英語だった。「ロングタイム・ノーシー、アイム・ショーヘイ・オータニ!」会場がざわついた。「サンキュー・フォー・カミングアウト・フォー・ディス・プレスカンファレンス。プリーズ・エンジョイ!」それを通訳が日本語に訳してドッと来た。大谷君も「笑ってもらってよかったです」とすぐネタばらし。

「今日はお別れということではなく、皆さんと楽しい時間を共有したいと思っています。僕からは一つ皆さんに感謝の気持ちを伝えたいなと思って、今日ここに来ました。5年前、ここにお世話になると決めてから、本当に色んな方のお世話になって、ここにいる栗山監督、GM、球団関係者の皆さん、両親、今まで野球でお世話になってきた人たち、チームメイト、ファンの皆さん、本当に色んな方々のお世話になってここまで来れました」

 ぜんぜんウェットな場ではない。大谷君はさわやかだった。球場ビジョンに5年前の会見が映し出される。顔があどけなくて体型もほっそりしている。僕らはずっと彼を見てきたから何となくずっとシュッとしてるイメージだけど、こうして映像と見比べると5年間の変化が如実だ。顔つきも身体も心もタフになった。すごいなぁ。ジンと来るなぁ。

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