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鈴木 涼美
2017/12/31

安室奈美恵14年ぶりの紅白出場に、なぜファンは戸惑うのか

アムラーは全員「大衆」だった

 テーブルに並べられた数あるおでんの具の中から、一番美味しかったものを聞かれ、初めて食べたと言って「はんぺん」と答えた安室ちゃんは死ぬほど可愛かった。中学生の私が毎週楽しみに見ていた「アムロ今田きっとNo. 1」の一コマだ。

「アムロ、今田きっとNo.1」(日テレ系)に登場

 私は当時、安室奈美恵出演番組を3倍速で録画したビデオテープを何十本も作っていたが、そこには「HEY!HEY!HEY!」で「ファンキーモンキー大賞」なんていうサル顔をいじられたやや不名誉なトロフィーを渡されてぶーたれる姿や、「THE夜もヒッパレ」でかつて「ポンキッキーズ」で共演していた鈴木蘭々と久しぶりに一緒に歌っている姿、シャ乱QのつんくとMCを務めた特番で「なみむし」なんていうあだ名で呼ばれている安室ちゃんの姿が今でも残っている。mistioのCMもクレープアイスのCMもX-55のCMも。

時代と寝て、大衆に応え、ダサいこともしてきた安室ちゃん

 このほど、すでに引退を発表した安室奈美恵が14年ぶりの紅白出場、という見出しが各紙紙面を飾り、近年、テレビなんていう年寄り世代の大衆娯楽とは一線を画したライブ中心の活動をしていた彼女のファンは喜んだり戸惑ったりと忙しくしている。私としては、正直、彼女の紅白出場がこれほどの波紋を呼ぶことを少し意外に感じている。

 と、いうのも、私の中に色濃く残る、自分が多感な10代だった頃の安室ちゃんの記憶というと、きちんと時代と寝て、きちんと大衆に応え、きちんとダサいことをしている姿だからだ。それもそのはず。安室ちゃんが最後に紅白に出場したのが2003年、私がちょうど20歳の時なのだ。その後、彼女はスタイルを重視し、本物志向を強め、今のオシャレな姿にシフトチェンジしていくわけで、その圧倒的なアーティスト感に惹かれるフォロワー達が、「お年寄りと子供の天国」な紅白出場にやや微妙な面持ちを浮かべるのはちょっとわかる。

 しかし、彼女のあの大物感は、当然テレビに育てられた部分が大きく、私たちアムラーが追いかけていた彼女は、毎日チャンネルをひねれば画面に映り、今田耕司やモト冬樹とフザけていた彼女でもあるわけで、私たちは間違いなく大衆だった。そして安室ちゃんは、そんな大衆たちに、つまり、最も流行っているものに飛びつき、ゴールデン番組にかじりつき、芸能人が結婚記者会見で着たスカートを奪い合って買っていた私たちに、しっかり寄り添ってくれていた。