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戦後芸能史を背負った男「ジャニーさん」の到達点はSMAPだったのか?

「週刊文春」1月4日・11日 新年特大号 最新レビュー

2017/12/30

ジャニーさんの到達点 コントもできるアイドルグループ

「彼らは喜劇と音楽の幕間にダンスというそれらと地続きの娯楽を演じることで、日本社会に自らの居場所を少しずつ作り上げていったのだ」(乗田綾子『SMAPと、とあるファンの物語』より)

 彼らとは初代ジャニーズ、いまのジャニーズ事務所のアイドルたちの原点だ。今週号の表現を借りれば「ナベプロに庇を借りていた小さな芸能プロダクション」の時代の話である。彼らを糸口にしてジャニーズ事務所も居場所を作っていく。そしてダンスや音楽はもとより喜劇までをも、自らがMCを務める番組の中でやってのけるアイドルグループをやがて生み出す。SMAPだ。

SMAPとKinKi Kidsが参加した2011年のイベント ©文藝春秋

 乗田綾子『SMAPと、とあるファンの物語』は、デビュー前からのSMAPを書いたクロニクルであると同時に、その裏にあるジャニーさんのエンターテイメント観を浮き上がらせていく好著である。ここでは、ジャニーさんが一番尊敬する人物としてボブ・ホープの名をあげたり、また「コメディが一番偉いんだ」という発言などが引かれている。

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 コントもできるアイドルグループSMAPはまさにジャニーさんの理想の到達点ではなかったか。「踊れないじゃない」とSMAPを腐したメリーさんと、ここでも対照的である。

本田宗一郎と藤沢武夫、盛田昭夫と井深大、そして

 将来のスターを発掘して育て、売り出していくプロデュース能力を誇るジャニーさんと、経営・マネジメント能力の高いメリーさん。それぞれの強みから、自らが見出した少年たちをどんどんデビューさせたいジャニーさんと、グループを増やすことに反対するメリーさんの齟齬が今週号の記事に書かれもする。

 しかし見方を変えれば、理想主義のジャニーさんと現実主義のメリーさんは互いに補完しあう関係でもある。本田宗一郎と藤沢武夫、盛田昭夫と井深大、こうした日本の戦後経済史に残る名コンビに匹敵する姉弟なのではないか。そんなことを深読みさせる記事である。

ジャニーズ事務所 ©時事通信社
戦後芸能史を背負った男「ジャニーさん」の到達点はSMAPだったのか?

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