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規格外の山男が語る「人生にチャレンジが必要な理由」――望月将悟×田中陽希 対談 #2

TJAR絶対王者×百名山ひと筆書き

2018/01/01
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#1より続く)

 規格外の山男が顔を合わせた対談の後編。「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」を4連覇中の消防士・望月将悟さん(39)と、「日本百名山ひと筆書き」「日本二百名山ひと筆書き」を達成した田中陽希さん(34)が語る「反響」「限界」そして「挑戦」。

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望月 TJARのことをテレビで観たり、講演会を聞きに来てくれたりした人から「自分もチャレンジしてみようと思う」といわれたりはしますが、正直、最初は自分がゴールすることだけで精一杯でしたからちょっと戸惑いました。でも次第に言葉をかけてもらうことが多くなり、TJARに挑戦することだけでも人に何かしら影響を与えることが出来るんだとわかってきました。

 講演を聞いた中学生からこんな作文をもらったこともありました。「走るのが嫌いだったけれど、望月さんが眠いのを我慢して走ったり、何回も止めたくなったのに頑張ったという話を聞いて、僕もマラソンをやってみたくなった」。こんな感想をもらうとまだ頑張らなきゃという気持ちになりますね。

旧知のカメラマン藤巻さんを前にリラックスする2人 ©藤巻 翔

田中 僕も人前で話す機会は増えたのですが、毎回「何を自分は偉そうなこと言っているんだろうな」と疑問に感じたりしてますね。個人的には変な挑戦をしているやつがいることを知ってもらえたら十分じゃないかなと思っているのですが、それでもいろんな感想をもらいます。

 いちばん驚いたのは、挑戦中に「生きる力をもらっています。自殺を思いとどまりました」と言われたこと。また、ご夫婦で百名山をテレビで見ていて「二百名山ではうちの近くの山にも来るから応援に行こう」と楽しみにしていたら、僕が行く直前にご主人が事故で亡くなられ、応援に来てくださった奥さまと娘さんから報告を受けたこともあります。岐阜県の能郷白山という山で出会った方は、「ガンで余命半年と告げられたんです」とおっしゃって。そうしたら、一年後に岐阜市で講演をした時にも来てくださったんですよ。「あれから頑張って生きています」と、抗がん剤治療の副作用のために頭にバンダナを巻いておられました。

望月 どういう言葉を返すの? 自分もガンの闘病中にテレビで見て勇気をもらったと講演会に来てくださって、目の前で涙を流して喜んでくれた。でも返す言葉が浮かばず、「自分も頑張るから頑張りましょう」としかいえなかったです。

カメラの前で笑顔を見せる望月さん。だが…… ©藤巻 翔

田中 僕は最初はただ黙ってしまいました。気軽に「大変ですね」なんて言えないなと思って。でも次第に「ありがとうございます」でいいんだと気づいたんです。困難な状況を抱えている方にとっては、僕に会うだけで相当大変なはずです。だから、精一杯「来てくれてありがとうございます」と言うだけでいいんだ、と思うようになりました。