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箱根駅伝2018「シューズ」で見る勢力争い ナイキとNB躍進の理由

箱根駅伝2018「シューズ」で見る勢力争い ナイキとNB躍進の理由

2018/01/11
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 青山学院のV4で幕を閉じた第94回箱根駅伝。各校がしのぎを削るなか、水面下でもうひとつの熱い戦いが繰り広げられていた。それが各メーカーのシューズ戦争だ。テレビドラマ「陸王」がブームとなったこともあり、例年以上に各選手の足元に注目が集まった。駅伝好き集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんもそのひとり。今年のシューズ勢力図を、データとともに振り返ってもらった。

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 毎年、箱根駅伝終了後にはシューズファンによる「箱根駅伝出走者メーカーリスト」がネット上に流れてくるのが恒例行事。これまで、僕はこのリストにまったく興味がなかったんです。ですが、今回は、かなり注目して見る必要がありました。理由はナイキが「ヴェイパーフライ 4%」というまったく新しいシューズを投入してきたからです。

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 それまで長距離走においては、靴底は薄いほうがスピードが出るというのが常識だったんですね。初心者から中級者、上級者となるに従い、ソールはどんどん薄くなっていった。それがヴェイパーフライはまさかの厚底! しかもこの靴を戦略的に取り入れている大学があったり、選手たちが積極的に履いていたりするのを見て、どのくらい箱根駅伝に対応できるのか気になっていました。

國學院1区浦野から2区向への「ナイキ ヴェイパーフライ」タスキリレー

シューズ職人・三村氏と契約したNB

 そこに、もう一社飛び込んできたメーカーがあります。1月1日、ニューイヤー駅伝とともに突然CMを打ち始めたニューバランスです(ちなみにニューバランスは箱根駅伝でも30秒CMを打ちました)。このCMで発表されたのが、現代の名工・シューズ職人の三村仁司さんとのグローバル・パートナーシップ契約です。

 三村さんは元々、アシックスでアスリートのためのシューズを作っていた方で、瀬古利彦、有森裕子、高橋尚子、野口みずきも、信頼を寄せていた伝説的存在。「陸王」でカリスマシューフィッターとして登場した村野尊彦のモデルとも言われています。その三村さんがアシックスを定年退職して独立し、アディダスと専属契約を結んで生まれたのが、“アディゼロ タクミ”シリーズでした。

 このとき三村さんを頼ってきた選手たちは、こぞってアディダスへと靴を変えました。つまりメーカーではなく、三村さん個人についている選手がそれだけ多いということ。そして、ここにきて三村さんがニューバランスと契約したというCMが流れたわけです。いったい三村さんは、ニューバランスでどんなシューズを作るのか、と思っていたら、なんと1月1日のニューイヤー駅伝ですでにその靴が投入されていました。
旭化成の市田兄弟や“初代山の神”として知られるトヨタ自動車九州の今井正人も履いていたシューズがそれです。さらに翌日の箱根駅伝でも、思ったより多くの選手が三村さんがかかわったニューバランスのシューズを履いていました。

1月1日のニューイヤー駅伝で三村氏が作ったニューバランスが初登場。今井正人(左:トヨタ自動車九州)と神野大地(右:コニカミノルタ)、2人の“山の神”が揃って履いた

 これまではアシックス、ミズノがリードしてきた日本陸上界ですが、今年はその勢力図が変わるかもしれない——そんな思いで箱根駅伝ランナーたちのシューズに注目していたんです。

 お待たせしました。では、今年の箱根駅伝でどのメーカーのシューズが多かったのか、グラフで見てみましょう(いずれも「EKIDEN News」調べ)。