昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

木村 正人
2016/04/03

地下鉄が狙われたベルギー同時テロ
東京は防げるのか

source : 週刊文春 2016年4月7日号

genre : ニュース, 国際

現場の地下鉄駅に急行した救急車
Photo:Kyodo

 3月22日、ベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄で起きた連続自爆テロで死者28人、負傷者340人の被害が出た。

 昨年のパリ同時テロと同じく、セキュリティが緩く、不特定多数の人が出入りする“ソフトターゲット”が狙われた。「イスラム国」は犯行声明で、「ターゲットは慎重に選ばれた。敵対する十字軍の国々にはさらに悪いことが起きる」と明確な意図を述べた。

 地下鉄のテロ対策については、05年にロンドンで同時爆破テロが起きた際も議論されたが、空港のようなセキュリティチェックを導入するのは非現実的として、実質的には棚上げされていた。

 ロンドンの地下鉄の路線延長は402キロ(1キロ当たりの1日利用客は約8000人)。これに対して東京の地下鉄は路線延長304.1キロ(同約2万8000人)と世界で一番混雑している。

 もし東京の地下鉄でテロが起きたらロンドンやベルギーより大きな被害が出るのは避けられまい。不幸にも地下鉄サリン事件でそれは実証されているが、今も日本の公共交通機関のテロ対策はあまりにも薄い。防犯カメラの数も、欧州各国の水準と比較すると、かなり少ない。

 英国ではスノーデン事件で政府通信本部(GCHQ)の市民監視プログラムが「プライバシー侵害」と非難されたが、これを合法化して強化する調査権限法が議会で審議されている。過激派の通信をハッキングする以外にテロを防ぐ有効な手段がないためだ。

 では日本で不審者の携帯電話を盗聴し、必要とあらばハッキングできるのか。駅構内の防犯カメラを顔認証システムや利用客のICカードと連動させることは可能か。米国家安全保障局(NSA)のような市民監視プログラムを導入できるのか。そしてテロのリスクが高まったとき、武装した自衛隊員が駅構内に出動できるのか――。

 検討すべき課題は、山積しているが、プライバシーが重視される日本では、政権がこれらのひとつを議論しただけでも大騒ぎになりかねない。

 だが訪日観光客が年2000万人に近づき、20年には東京五輪・パラリンピックが開催される国として、ベルギーの事件の教訓を重く受け止めるべきだろう。

はてなブックマークに追加