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連載春日太一の木曜邦画劇場

春日 太一
2018/01/23

勝新太郎の凄い映画群が続々DVD化。嬉しい!――春日太一の木曜邦画劇場

『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』

1973年作品(89分)/東宝/2500円(税抜)/レンタルあり(VHS)

 マニアックな存在の旧作邦画のソフト化に関しては長らく、「なかなかソフト化されない」「されたとしても値段が安くない」という問題があった。

 が、近年になって、メジャー各社が次々と廉価版BD・DVDを出してくれるようになり、実にありがたい。これは松竹がかなり先行している印象だが、東映がその後に続き、ついに東宝も動いた。昨年末、勝新太郎率いる勝プロダクション製作の映画を一気に廉価版で出してきたのだ。そしてそのラインナップの中には「座頭市」「子連れ狼」という既にソフト化されている人気シリーズだけでなく、長いことソフト化されないできた勝主演「御用牙」シリーズも並んでいるではないか。動画配信はされているとはいえ、やはりパッケージで持っていたいというのがファン心理だ。

 そこで今回は、この東宝の英断への称賛と感謝の気持ちを込めて、シリーズ第二作『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』を取り上げる。主人公は勝扮する同心・半蔵。悪を取り締まるためならどんな手でも使う男だ。そのキャラクターは以前に取り上げた第一作と変わらないのだが、作品から受ける印象は随分と異なる。

 前作でも自慢の男根で女の口を割らせて事件を解決するという荒技を使っていたが、基本的には人情話が軸になっていた。が、本作には、それがない。全編ひたすらエロスとバイオレンスが炸裂する。

 出てくる敵がみんな強烈だ。

 裸になってエキセントリックに踊る、妖しげな秘術で信者を堕胎させる最初の神社も印象深いが、それはあくまで前菜。その後で出てくる尼寺がメインになる。そこでは信者の娘を裏でセリにかけ、さらに尼たちは落札した豪商にSMプレイをもちかける。その上、黒幕の勘定奉行が物陰で尼の乳を揉みしだきながら覗き見する――という、呆れるほどに淫靡な空間なのだ。

 次に出てくる盗賊・庄兵衛(佐藤慶)も凄まじい。盗みに入った商家で女子供関係なく皆殺しにしていくのだが、この描写が残酷だった。血しぶきをあげて無惨に死んでいく女子供。見おろす佐藤慶のサディスティックな笑顔――。地獄絵図としか言い様がない。

 そして、対する半蔵は半蔵で、庄兵衛から守るために潜入した金座でいきなり女主人を犯すという無茶苦茶ぶり。

 とにかくアクの塊のような描写のみで構成された作品なのだが、このソフトはぜひ売れてほしい。というのも、この極北の時代劇が当たれば、東宝にまだ眠るマニアックな作品のソフト化への期待も高まるからだ。特に、勝プロでは勝の初監督作『顔役』という、物凄い作品が残っている。

 東宝さん、頼みますよ!