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広島・田中広輔の図太さがチームを導いている

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/13

 少し前になってしまうが、2017年度のセ・リーグのベストナインに田中広輔が選ばれた。前年までのことを考えると驚きだ。

 カープファンとしては「すげー! よかったなコースケ」と伝えたい。驚きと書いたのは、一昨年までの田中はいいショートではなかったから、というわけじゃない。セ・リーグのショートには巨人の坂本勇人がいるからだ。坂本は高卒3年目で打率3割に到達しベストナインに輝いた「特別な選手」だ。一昨年の坂本は首位打者と最高出塁率に輝いている。

昨年のベストナインに輝いた田中広輔 ©文藝春秋

田中広輔は坂本勇人よりいいショートか?

 田中はあの坂本と競ってベストナインになったのだ。昨年の坂本はシーズン最後の方でやや打撃成績を落とした。シーズン前のWBCからスタメンで出場を続けたことの影響があったかもしれない。WBCでは控えだった田中はキャリアハイの成績だった。昨年の二人の打撃成績は、かなり拮抗した数字になった。ベストナインに田中が選ばれたのは、盗塁王(35個)と最高出塁率(.398)に輝いたことと、チームが優勝したことが大きかったと思う。

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 ただこれは「2017年の」ベストナインだ。持てる実力ではリーグナンバーワンのショートは坂本、という意見が多いと思う。田中の昨年の打率はリーグ11位の.290。3割じゃないんだよなー、とちょっと思ってしまう。特別な打者と思われるには、どうにも3割以上が欲しいところなのだ。エラーはリーグワーストの16。ゴールデングラブ賞を受賞した坂本のような、プロの中でも特別な守備能力の持ち主ってわけではない。

 でも、ここ2年の田中のプレーを観てきて気づいたことがある。田中こそが今のカープに重要なスピリッツを植えつけている。これはベストナインに選ばれなかったとしても大切なことだったと思う。田中にはミスを恐れないガッツというか図太さがあるのだ。この図太さが、特別な能力の持ち主の揃うプロ野球選手のなかで、田中がポジションを築いたポイントだ。

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